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【伝統芸能】

<評>見事な勘十郎の七化け 国立劇場「九月文楽公演」

 今月は昼の部が「生写(しょううつし)朝顔(あさがお)話(ばなし)」、夜の部が「玉藻前(たまものまえ) 曦(あさひの) 袂(たもと)」である。文楽は目と耳の二つで楽しませてくれるが、今度はその良い見本になる。

 「朝顔話」は、美しい節が快くいつまでも耳の底にうずくだろうが、これは太夫と三味線、つまり耳の領分。目の方はもちろん人形。後半の宿屋の段と大井川の段では、豊松清十郎が朝顔。清潔感の中に哀愁が漂い、素晴らしい。

 別に、嶋田宿笑い薬の段の幕開きに注目した。下女を遣う桐竹紋臣(もんとみ)と吉田玉彦、それに手代の吉田玉翔(たましょう)。三人ともに素直で爽やかな遣い方に好感が持てる。特に手つきの良さに感心した。

 夜の「玉藻前」は、目に重点が移る。金毛九尾という妖狐が興味の中心だ。

 およそ千年の昔。中国や天竺(てんじく)(インド)を荒らした妖狐が日本に現れた。魔界に引きずり込もうという魂胆である。狐(きつね)は帝(みかど)が寵愛(ちょうあい)する玉藻前を食い殺し、その体内に入った。人形は顔の前が姫、後ろは狐という両面に作られている。一瞬にして変わる様子が見逃せない。本性を見現された狐は那須野(現栃木県)へ飛び、殺生石(せっしょうせき)となる。ここで娘や若い男、奴(やっこ)などの七化け。早替わりで人形を持ち代え、動きもマッチさせていくのは至難だが、それをこなして大奮闘の桐竹勘十郎に客席は惜しみない拍手を送った。十八日まで。 (倉田喜弘=芸能史家)

 

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