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【伝統芸能】

<支える人>狂言作者・竹柴正二さん 抜ける柝の音 半世紀

 歌舞伎ファンは舞台裏から聞こえる「チョン、チョン」と二つ打つ柝(き)(拍子木)の音で待ちかねた開幕を知る。東京・歌舞伎座で柝を打つのは、狂言作者(歌舞伎劇の作家)の仕事で、竹柴正二さん(76)は「作者部屋生活」半世紀を超す長老だ。

 早稲田大文学部演劇学科在学中にアルバイトしたのが縁で、卒業後は三世竹柴金作の門下で修業。六代目中村歌右衛門(一九一七〜二〇〇一年)付きの狂言作者になった。現在は公演単位の担当制になっているが、以前は大幹部には専属がついた。「当時、歌右衛門さんにはいなくて、芸に厳しい大御所でしたので周囲から三カ月持つかと心配されましたが、亡くなられるまで三十年以上担当させていただいた」と語る。

 歌舞伎の脚本を手掛ける狂言作者の中で、河竹黙阿弥(一八一六〜九三年)や四世鶴屋南北(一七五五〜一八二九年)は大先達。いま東京の狂言作者十数人が名乗る「竹柴」姓は、黙阿弥が弟子に与えた姓に始まる。明治後半から外部作家が歌舞伎を書くようになり仕事内容は大きく変わったが、進行、舞台監督など裏方仕事は多岐にわたる。

 月半ばに上演台本が決まると衣裳(いしょう)やかつら、大道具、小道具などの詳細を記した附帳(つけちょう)を作って業者に渡す。近年までそれぞれの役者用に台本からセリフだけを毛筆で書き出した「書き抜き」を作る仕事もあったが、いまは印刷された台本が役者にわたるようになった。名題下(下級俳優)の配役割り振り、舞台に使う手紙や襲名披露の「口上」台本を書くのも役割だ。

 楽屋や舞台裏に進行を告げるカーンと澄んだ柝の音にキャリアをうかがわせるが、一番気を使うのは障子や小道具に隠れて役者にセリフを教えるプロンプ役とか。「初日から数日間、セリフに詰まった瞬間に対応するタイミングが難しい」と話す。柝の一音にも魂を込める。「柝は『抜ける音』が大切で、幕切れなど役者さんによって息が違うので緊張する。それらを感覚で覚えるのも修業の一つです」 (森洋三)

 

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