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【伝統芸能】

継ぐ小さんの「自然体」 柳家さん喬 噺家生活半世紀

 艶のある江戸弁と柔らかな物腰の高座スタイルで魅了する柳家さん喬(69)が落語家生活五十年を迎え、十一月四日に記念の一門会を開く。師匠の五代目柳家小さん=二〇〇二年死去=の教えを受け継ぎ半世紀。「芸に完成はない。日々精進し古典落語のしっかりした幹でありたい」と正統派の道をぶれずに歩む決意を示した。 (神野栄子)

 「落語は理屈をこねて演じると、その理屈ばかりが前に出る。うちの師匠が言っていた『全て自然体』で演じ、それをお客さまがどうとらえてくれるかが大切」と小さんの教えの神髄を語る。その心構えは特に女性の表現に生きた。人情噺(ばなし)の「たちきり」「文七元結(ぶんしちもっとい)」など、多彩な女性の心理と情を細やかに語り分けることを意識している。

 高座では高度な技術で見せ、聴かせる。「身のこなしを女らしく演じるだけではダメ。声の調子などで表現しなければならない。それでお客さまが好きな女性のタイプを思い描いてくれれば」

 演芸が盛んな東京・浅草に近い墨田区本所で生まれ、浅草は幼いころから遊び場だった。高校時代はラジオから流れる小さんの落語を聴きまくった。「面白くて、わざとらしさがなくて。高校生にも景色や噺の空気が感じ取れた」とあこがれ、一九六七年に門をたたいた。

 落語界入りとほぼ同時に日本舞踊も習い始める。今年九月二日に死去した藤間流の藤間紋一郎さんの指導を受け、藤間一寿生(かずお)の名で名取にもなった。「噺と踊りの共通点は見えない景色を見せたり、いない人間を表現したり、イメージしながら創り上げていくところ」。日舞から学び、落語の隠し味になった。

 これまで披露した古典落語の噺は約三百席で、うち五十席ほどは今もよく演じる。近年はホールでの独演会が増えて、その演目を初披露する「ネタおろし」や久々に披露する「蔵出し」で学ぶこともある。「二十年ぶりに(廓(くるわ)噺の)『お直し』をやりましたが、新しい発見がある」。経験を重ねて蔵出しする重要性を実感した。

 人気者の柳家喬太郎(53)ら弟子十一人を育て、人情噺の名手と呼ばれるまでになったが、落語界に憂いも持つ。「最近は新作落語をやる人が増えた。お客さまは古典も新作も両方見てくださるが、古典を一生懸命にやっている人に目が向かなくなることが怖い」と言う。木に例え「幹である古典がしっかりしていないと、伸びた枝葉に美しい花は咲かない。花の咲き方をお客さまに見ていただくんですから」と警鐘を鳴らす。

 五十一年目に入り、さん喬が目指すのは客との感動の共有という。「お客さまと一緒に人物や場面を創り上げ、一つの『絵』として描ききる。この落語の美学を追い求めたいんです」

      ◇

 「さん喬ご愛顧50年」と題した一門会は十一月四日午後一時、同六時の二回、東京・よみうり大手町ホールで。オフィスエムズ=(電)03・6277・7403。

 

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