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【伝統芸能】

<和の懸け橋>「触れたい」に向き合う 欧米で日本舞踊 藤間貴雅(46)

 「どの国にも独特の踊りがあり、互いの文化を理解する上で欠かせない。日本舞踊の役割も大きい」。ここ数年、欧米で日本舞踊の普及に努めている藤間貴雅(たかまさ)(46)はそう考える。

 バルト三国の一つ、リトアニア駐在の日本大使の知己を得て、二〇一五年から訪れている。首都ビリニュスなどに日本庭園が続々とでき、地元住民から「枯れ山水に世界や宇宙を感じる」といった声も聞かれ、ちょっとした日本ブームだというが、日本舞踊となるとまだまだ知名度は低い。「歌舞伎をイメージする人が多く、扇子を手に踊っても振り付けや所作の意味を理解してもらうのは難しい」

 そこで、日舞と歌舞伎の妙を感じてもらえるよう古典「石橋(しゃっきょう)」に出てくる獅子のような勇壮で華麗な演目を披露すると、大きな拍手と歓声を浴びた。「行く先々で首や(獅子の)毛を激しく振り乱しました」と笑う。

 一九九〇年代初め、旧ソ連から独立し、近年は経済成長を遂げたが、踊りに適したホールなどはあまり整っておらず、集会所や会議室のような室内で舞うことも少なくない。更衣室や化粧する場所がないこともざらだ。しかし、そんな環境でも集中して踊ると花をもらったり、手料理を振る舞われたりする。座席などなく立って見ている人も多いが、「また来てほしい」と熱く頼まれるという。

 「日本舞踊の海外公演はまだ少なく、舞踊家もあまり積極的ではない」と語る。公演は赤字になってしまうこともあるが、こうした地道な公演や交流を重ね「少しずつ日本舞踊の裾野が広がれば」と願う。

 これまで、フランスやドイツ、ロシアなどでも踊ってきたが、交流を意識するようになったのは、三年ほど前に米ハワイ島に住む日系人たちの前で踊った時からだ。日本舞踊になじみのない観衆の理解を助ける解説もなく「好き勝手にやりっ放し。私たちとコミュニケーションを取ろうとしていない」と叱られた。日本の文化にもっと触れたい、もっと知りたいという人たちの思いにきちんと向き合わなければと感じた。舞踊実技の体験講習や、化粧の技術披露などもできる限り続けている。

 海外で踊るようになり「踊りが外交の場で重要な役割を果たす」ことも知った。レセプションで各国のダンスを披露し合うこともよくあり「他国との関係を良好にするツールになる」という。日本舞踊家として力になりたいと思っている。

 昨年度から年一回、日本の外務省から委嘱され、新任外交官らを相手に、日本文化の重要性を講義し、日本舞踊のエッセンスも教えている。扇子を持たせ、四十五秒ほどにした「さくらさくら」などの踊りも体験してもらう。

 来年はリトアニアとラトビア、エストニアのバルト三国で踊る。また、日本人のハワイ移住百五十周年を記念した行事にも出演。不安定な世界情勢にも「文化のことで友好を築けば争うことはない」と日本舞踊の役割をかみしめている。(藤浪繁雄)

 <ふじま・たかまさ> 1971年生まれ。日本大芸術学部を卒業後、日本舞踊家藤間章作に師事。藤間流勘右衛門派師範。自身の会「貴雅の会」を主宰。2002年から商業演劇にも携わり、故蜷川幸雄さん演出の芝居、宝塚歌劇、テレビドラマで振り付けや所作指導を担当。16年、海外公演などを進めるためにNPO法人「ハーモニーオブジャパン」を設立、理事長を務めている。

 

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