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【伝統芸能】

<和の懸け橋>英語でうなる人情話 ROKYOKU 春野恵子

 「五枚の皿を箱の中〜」と節回しするところが、英語だと「Five dishes in a box〜」になる。東京・早稲田大学で十月、浪曲師の春野恵子が英語浪曲「番町皿屋敷〜お菊と播磨」を披露した。詰めかけた約百人の留学生らは、汗を流しながらうなる春野の熱演にじっと聴き入った。

 ほかにも人情味あふれる「両国夫婦(めおと)花火」を英語字幕付きで披露。終演後の質疑応答では「ローキョクはどこに行ったら聴けますか?」「どこで習えますか?」。そんな質問が飛び交った。会の運営スタッフで、ブラジル出身の国際コミュニケーション研究科のファヴェロ・タイスさん(28)は「日本の話芸の素晴らしさを感じたが、日本語を知らないと楽しめないのでもっと勉強します」と励みになった様子。春野は「一回聴いただけなのに興味を持ってくれて、うれしい」と笑顔で話す。

 二〇〇〇年ごろ、民放のバラエティー番組で東京大卒の家庭教師「ケイコ先生」として人気を呼び、タレント活動をしていたが「目の前のお客さまを楽しませる演芸」に強くひかれていた。中でも「小さいころから大好きだった時代劇とミュージカルの両方を兼ね備えた浪曲を鑑賞し、衝撃を受けた」。〇四年、迷わず転身した。

 修業に励み、芸が身に付いていくうち「英語で浪曲ができないか」との思いが頭をよぎった。四〜六歳のころ、米国に暮らし、日本に戻ってもしばらく日本語が話せない時期があった。日本語に不自由がなくなり日本の話芸の素晴らしさを知ると、外国の人にも知ってほしいと思った。

 英語は堪能だが、いざ曲選びや翻訳を始めると結構難しい。語尾を伸ばしたり、抑揚を付けたりする浪曲特有の節回しは英語になじむのだろうか…。「七五調の節を英語でうなるんですから、それは大変。単語を選ぶところから始め苦労があった」と振り返る。

 それでも英語イベントを手掛けている大阪の山本能楽堂などの協力を得て、一三年に約二十分の英訳版「番町−」を初演し、好評を得た。これに「両国−」の字幕版など数曲用意し、海外公演に打って出ることにした。初の海外公演は一四年の米ニューヨーク。賛同者から三百万円を目標に資金を募るクラウドファンディングで五百五十九万円を得て公演の旅に出た。

 さらにドイツ、ブラジルを回り、今年はローマ、ダブリンと、これまで八カ国でROKYOKUを披露してきた。英語浪曲に加え、字幕版はその国の言語訳を用意する。なるべく分かりやすい言葉を選んでいる。そのおかげで「ストーリーも無理なく通じているみたい」と実感する。

 各国での要望を受け、外国語訳になじむ作品を探っている。「人を引き込む力のある浪曲を知ってもらいたい。物語で表現される日本人の人情などに触れ、日本ファンが増えれば」と願っている。 (神野栄子)

<はるの・けいこ> 東京都出身。2000年、日本テレビ「進ぬ!電波少年」の企画で注目を集める。04年、上方浪曲師の二代目春野百合子に弟子入り。06年初舞台。現在、関西を中心に年間約200回の公演をこなす。

 12月28日午後7時から東京・原宿の「ラドンナ原宿」で、日本語の「ロック浪曲」を披露する「年忘れ!ローキョックンロールSHOW」を開く。

 

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