東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<評>絶品の話術と曲芸 江戸曲独楽の三増れ紋

 寄席や落語会でいろどりとして登場する曲芸などの芸人は、多くが落語の協会に所属している。しかし、そのような立場でなくても、落語会でおなじみの演芸家はいる。江戸曲独楽(きょくごま)の三増(みます)れ紋(もん)もその一人。十月十三日の「立川生志落語会 ひとりブタじゃん」(横浜にぎわい座)にもゲスト出演し、華を添えた。

 開いた扇子の紙の先端や刀の刃先で独楽をまわす曲独楽は曲芸の一種であり、その芸には緊張感が漂う。緊張が続くと、観客の集中力も低下する。そこで適度にリラックスさせる必要がある。太神楽(だいかぐら)曲芸を二人一組で演じる場合、曲芸を演じる者と冗談をまじえた口上役とに役割分担されているのはそのためだ。

 れ紋はその役割を一人でこなす。「江戸曲独楽師は十人いるかいないか。女性は四人。競争率の低いところで頑張ってます!」といった世間話のような親しみのあるトークで、観客の緊張感をほぐした後、独楽の芸を始める。といっても大半はしゃべりに費やされる。れ紋は曲独楽の修業前に漫才の内海好江に師事していただけあって、観客の心をつかみ、なごませる話術にたけている。その長所を生かして曲独楽を演じている。

 この緊張と緩和のメリハリが絶妙で、心地よさも漂う。そこには押しつけがましさはない。主である落語の高座を邪魔せずに客席を盛り上げている。れ紋ならではのこの芸には最近、うるおいと磨きがかかり、ますます存在感を増している。 (布目英一=演芸研究家)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報