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【伝統芸能】

<日本舞踊のススメ 阿部さとみ> 引き算の美「地唄舞」

 舞踊は明治以降にダンスの訳語として、舞と踊りを合体して作られた言葉です。舞は旋回運動、踊りは跳躍運動を基本としたもので、水面に輪を描くミズスマシを「まいまい」ともいうこと、スズメが飛び跳ねる様を「雀(すずめ)百まで踊り忘れず」という例からも、舞と踊りの違いがわかるかと思います。今回は舞、その中でも京(京都)や大坂(大阪)の花街(かがい)で洗練されていった「地唄舞(じうたまい)」について記します。

 日本舞踊には座敷舞というジャンルがあり、一般的には上方の花街で発達した舞を指し、主に地唄(上方の三味線音楽)を伴奏に使うため、地唄舞とも呼ばれています。東京・国立劇場では開場の翌年の1967年から毎秋、「舞の会」を開催。京都、大阪の四流(井上流、楳茂都(うめもと)流、山村流、吉村流)を中心とした花形や実力者が、東京で顔をそろえる人気の公演となっています。

 演目もバリエーション豊かに、地唄舞らしい切ない女心をしっとりと紡ぐ作品をはじめ、能に取材した格調高いもの、ユーモラスな曲まで、一度に見られるのも魅力です。

 今年の「舞の会」(11月23日)で、楳茂都梅衣華(うめきぬはな)さんが披露した地唄「忘(わす)れ唄歌(しょうが)」は「長崎で流行歌を習い、初めと終わりは覚えられず、真ん中も忘れた。そんなこともあるだろうと書いてもらったのだけど、それも出口でなくしてしまった」というユニークな内容。言葉に沿った写実的な振りは控えめに、淀(よど)みない舞の中に曲の雰囲気をさりげなく描出し、そこに座敷舞の洒落(しゃれ)た趣が滲(にじ)みました。

 江戸、東京で発展した歌舞伎舞踊がその役の扮装(ふんそう)をし、表現も具体的なのに対し、京、大坂の舞は、シンプルな扮装と象徴的な表現で行われます。いわば装飾をそぎ落とした引き算の美学、日本の奥深い文化を今に伝えています。 (舞踊評論家)

 

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