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【伝統芸能】

<新かぶき彩時記>「股旅物」の長谷川伸 底辺の少年期作品に結実

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 歌舞伎に登場する渡世人。なかでも明治〜昭和初期に書かれた新歌舞伎の主人公は、心意気を持った人物が多いのが特徴です。特に「股旅物」といって、各地を流浪し、義理人情に厚い一匹狼(おおかみ)の生き方を描いた作品群は、当時一大ブームとなりました。

 その火付け人は「一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)」「沓掛時次郎(くつかけときじろう)」などの作者・長谷川伸。幼少期に親と別れ、生活のために工事現場や出前持ちをして働いた過酷な少年時代が、社会の底辺で生きる人々へのまなざしを養います。その経験は登場人物の設定にも生かされました。「一本刀〜」のヒロインお蔦(つた)のモデルは、出前持ち時代に親切にされた遊女屋の女性とされます。

 「沓掛〜」の主人公・時次郎は、一宿一飯の義理の加勢でやむなく斬った博徒・三蔵の妻おきぬとその子を敵方から守りながら旅に出ます。中仙道の熊谷の裏通りで寒空の下、追分節を歌いながら日銭を稼ぐ姿に哀愁が漂います。長谷川は彼らのモデルを自著で「土木建設の下請け人だった父親の知人」としており、親交のあった博徒の境遇も参考にしたとか。時次郎は、三蔵の子を身ごもっていたおきぬへの想(おも)いを、最後まで胸に秘め通す一本気なキャラ。長谷川は出会った人々のなかに自分の理想を重ね合わせていたのでしょう。 (イラストレーター・辻和子)

 

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