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【伝統芸能】

<歌い踊る切手>孝行の巻(1970年) 沖縄の組踊にも大蛇

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 「神楽(かぐら)」と名の付く芸能は、全国各地に残る。しかし、その姿は多様だ。広く知られているのは「出雲流神楽」だろう。「出雲流神楽」は、誰もが楽しみながら神話を理解できるよう伴奏入りの劇の形をとっているのが特徴だ。

 「出雲流神楽」は、中国地方を中心に、全国各地に広がったが、何といっても有名な演目は、出雲神話に基づき作られた「八岐大蛇(やまたのおろち)」。恐ろしい八岐大蛇の襲来に怯(おび)えるクシナダヒメの前に、屈強なスサノオが現れ、見事に退治して助ける、という粗筋。大蛇の尾から出た剣こそが、現代に至るまで皇位の印である「三種の神器」の一つとなる「天叢雲(あめのむらくもの)剣(つるぎ)」とされている。

 「八岐大蛇」に似た演目が沖縄の歌舞劇「組踊(くみおどり)」にもある。琉球王国の芸能を統括する役職、踊奉行で「組踊」の創始者でもある玉城(たまぐすく)朝薫(ちょうくん)が作った「孝行(こうこう)の巻(まき)」だ。琉球切手の組踊シリーズの中にも入っている。

 粗筋はこうだ。父を亡くし、母・弟と共に貧しい生活を送る娘は、ある高札を目にする。これは、暴れ回る大蛇の生贄(いけにえ)となった者には、残された家族の暮らしを保障する、というものだった。娘は、自ら進んで生贄となるが、観音様の功徳で助けられる。

大蛇に襲われる娘(新垣悟(右))=神田佳明撮影

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 「孝行の巻」という名の通り、儒教の徳目の一つである「孝」を主題としている。儒教の影響下にあった琉球王国らしい。

 この文章を書いていて、フッと思い出したことがある。今は受章基準が変わったが、「緑綬褒章」は、戦後しばらくまで、「孝子」にも贈られたことを。まったくの蛇足だが。 (横浜能楽堂館長・中村雅之)

 

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