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【伝統芸能】

<和の懸け橋>打てば響く世界つなぐ 創作和太鼓集団 鬼太鼓座(おんでこざ)

 ドーン、ドドーン。迫力あふれる和太鼓の音が、山あいの小さな集落に響き渡る。埼玉県東秩父村の創作和太鼓集団「鬼太鼓座(おんでこざ)」の合宿所。廃校となった小学校校舎を利用した合宿生活で、座員は毎朝六時から一時間のランニングなどで体を鍛え、太鼓の技術を磨いている。

 「走ることと音楽は一体」「生活のすべてが音になる」との理念を掲げる。全身を使って勇壮に打ち鳴らす演奏技術は、すべて過酷な合宿生活で習得される。

 直径三尺八寸(約一・一五メートル)の大太鼓をふんどし姿でたたき、時にはステージに横たわった状態で演奏する。「Taiko Drummers」と呼ばれる鬼太鼓座の活動について、音頭取(おんどとり)(代表)の松田惺山(せいざん)(60)は「ワールドミュージックの一つとして認められた」と自負する。一九六九年の結成以来、約五十カ国・地域で演奏。米国や中国、台湾の各地をくまなく走って移動し、立ち寄った先で公演を重ねてきた。

 ステージを見て入団志願の若者が各国から来る。観光ビザの有効期間に合わせ、九十日間の体験合宿を随時行っているが、ランニングや体幹トレーニング、写経が日課に組み込まれ、午後には数時間のハードな太鼓の練習を課す。炊事当番もある上、山村生活には娯楽もない。松田は「華やかなイメージを持ってくる人が多いが、合宿生活は同じことの繰り返し。ほとんどの人が途中で挫折し帰国する」と明かす。

 台湾にルーツを持つ米シカゴ出身キャサリン・クオ(27)はそんな合宿生活を約二年間続ける。父の影響で、中学時代に鬼太鼓座のDVDを見て感化され、カリフォルニアの大学で太鼓のアマチュアグループで活動するうち「もっと究めたい」と考え、門をたたいた。「ここでの生活が好きです」と座になじみ、黙々と練習に励んでいる。

 国内外で年間約六十回の公演をこなし、イベントなどでも演奏する。欧米では和太鼓特有の変幻自在のリズムを取るバチさばきや、尺八、箏、三味線など、ほかの和楽器との合奏に関心が集まる。観客の鑑賞スタイルは国によって異なるという。「例えば、米国は序盤から盛り上がるし、欧州、特にドイツの人は緊張感を漂わせて太鼓の低音をじっくり聴こうとする」と松田。この秋はトルコでの公演を成功させた。

 来年二、三月に米国公演を控える。「今はホームシックはない」というクオだが、自身にとっての凱旋(がいせん)公演を「とても楽しみです」とほほ笑む。松田は「和太鼓のリズムを通じ、世界の若者や子どもたちがもっと社会とつながっていけるヒントがあるのではないか」と未来を見据える。 (藤浪繁雄)

<鬼太鼓座> 1969年、故田(でん)耕(たがやす)さん(31〜2001年)が主導し、新潟・佐渡を拠点に結成。75年、米ボストンマラソンを完走後、ゴール地点で大太鼓演奏を披露し話題となり「和太鼓ブーム」を起こした。その後分裂などを経て、本拠の静岡県富士市のほか、東秩父村と福島県会津村に合宿所を構える。ふんどし姿での演奏はフランスのデザイナー、ピエール・カルダン氏の提唱という。近年は竹を使った創作楽器作りなど「音楽体験を通じて世界中の子供たちをつなぐ」取り組みも続けている。

 来年1月29日には名古屋市青少年文化センター・アートピアホールで公演。

 ※「和の懸け橋」は今回で終わります。

 

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