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【伝統芸能】

三陸に350年、鎮魂の神楽 ドキュメンタリー映画20日から公開

 岩手県宮古市の黒森神社に伝わる黒森神楽(かぐら)に密着したドキュメンタリー映画「廻(まわ)り神楽」(遠藤協(かのう)、大沢未来共同監督)が20日から、東京・ポレポレ東中野で公開される。約350年前から変わらず、三陸沿岸の集落を巡り、人々の心のよりどころとなってきた神楽は、東日本大震災の犠牲者を鎮魂し、住民を励ましてきた。製作陣は「人々の神楽に寄せる思いを見てほしい」と話す。 (深井道雄、藤浪繁雄)

 黒森神楽は例年正月から三月にかけ、同県久慈市から釜石市まで南北約百五十キロの集落を巡回する。神楽衆(保存会のメンバー)が黒森神社の神霊を移した獅子頭を携え、家々の庭や座敷で、海の安全や大漁、家内安寧、厄よけを祈って舞う。神楽は全国に数多いが、これだけ広範囲で活動する例は珍しいという。二〇〇六年に国の重要無形民俗文化財にも指定された。

 映画は一二年、遠藤、大沢両監督が宮古市の「震災の記憶伝承事業」に携わり神楽の存在を知ったことをきっかけに製作に着手。遠藤監督は「『なぜ神楽を続けるのか』と聞くと、若い神楽衆は『神事だから理由などない』と答えた。津波の被害が何度かあった地に続いている芸能に興味を持った」と話す。

 撮影は一六年九月から始まり、宮古市はじめ各地に暮らす十数人の神楽衆に取材。神楽衆は仕事の傍らそれぞれ自主的に稽古に励んできた。昨年一月三日、黒森神社で神霊を獅子頭に移す祭事に始まり、同三月の巡行の終わりまでカメラを回した。両監督は神楽衆の稽古風景や芸にかける思い、各地の巡行先で披露する芸、ユーモラスな神楽に笑い転げる住民の表情などにこだわった。

 二千万円余の製作費には、文化庁の補助金のほか、「伝統文化を残してほしい」「被災地を励ましてほしい」という地域住民や企業から寄せられた約三百万円の協賛金も含まれている。映画には、住民たちの復興への思いや「震災前のように“いつも通り”やってくる神楽に戻そう」といった願いも託された。両監督を支える北村皆雄エグゼクティブプロデューサーは「厄払いだけでなく、この神楽には死者を弔う舞もある。生と死をつなぐ、という視点からも見ていただければ」と語る。

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 上映会の開催も受け付けている。ヴィジュアルフォークロア=(電)03・3352・2291。ポレポレ東中野では十九日まで北村さんと戸谷健吾さんが監督し、宮城県石巻市の雄勝法印(おがつほういん)神楽を追ったドキュメンタリー「海の産屋(うぶや)」を上映中。

◆今年は20カ所「ほぼ従前通り」

 黒森神楽の巡行は今年も3日に始まった。今後、土日や祝日を中心に3月まで約20カ所を回る。神楽衆の田中大喜(ひろき)さん(39)によると、震災後は新改築した家屋を新たに訪ねることもあったが、今では「ほぼ従前通り」に。

 戦後、後継者不足で中断した時期もあったが、復活後は「自分たちの代で途絶えさせたくない」との思いも強いという。田中さんも若い世代への伝承を課題に掲げる。昨年暮れに復活させた演目もあり「巡行中はそれに磨きをかけたい」と話す。13、14日は田野畑村を巡る。

 

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