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【伝統芸能】

<らくご最前線>桂米団治 「永遠の若旦那」健在

 一月十四日、東京・銀座ブロッサム中央会館(九百席)で「桂米団治独演会」を見た。上方落語家の米団治は毎年この会場で正月と夏の二回、独演会を開く。いわば年中行事だ。

 一席目は芝居好きの若旦那がでっちの定吉を相手に「忠臣蔵」の物まねに興じる「七段目」。若い頃から得意にしてきた鉄板ネタだ。サゲの「七段目で落ちたんやな」「いいえ、てっぺんから落ちました」は、東京の演者で耳慣れた「てっぺんから落ちたのか」「いいえ、七段目」の逆だが、これは父である桂米朝の型を継承したものだ。

 二席目は、ネタ出しされていた「花筏(はないかだ)」。病気の大関花筏の身代わりとしてちょうちん屋が金で雇われて巡業に出る噺(はなし)で、東京でもよく演じられるが、元は上方落語。米朝も演じた。地元の力自慢、千鳥ケ浜との取組に慌てるちょうちん屋、花筏に殺されるとおびえる千鳥ケ浜。このドタバタを楽しく描く軽妙な語り口が心地よい。

 三席目は、これもネタ出しされていた「天王寺詣(まい)り」。五代目桂文枝や六代目笑福亭松鶴(しょかく)が得意とした噺で、米朝の演目ではない。米団治は昨年ネタおろししたばかりで、高座に掛けるのはこれが三回目だという。

 秋の彼岸、犬の供養に引導鐘をついてもらおうと大阪の四天王寺に出かける二人連れ。境内のあれこれを二人の会話で詳しく描写するのが聴かせどころで、物売りの場面では鳴り物も入ってにぎやか。大阪ならではの噺を守ろうという米団治の意欲がうかがえる、すてきな一席だ。東京の落語に親しんだ耳にもよくなじむのは「米朝の血」のなせる業か。

 父の師匠の名跡「米団治」を継いで今年で十年。暮れには還暦を迎えるが、天性の明るさと二枚目の芸風で上方落語の魅力をスマートに表現する高座は「永遠の若旦那」の魅力に満ちている。 (広瀬和生=落語評論家)

 

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