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【伝統芸能】

<歌舞伎>壱太郎「運命的な出会い」 新派名作「滝の白糸」で初主演

 女形のホープ中村壱太郎(かずたろう)が東京・歌舞伎座の「三月大歌舞伎」で、劇団新派の名作として知られる「滝の白糸」の白糸役で初主演する。演出は新派の舞台などで何度も白糸を演じてきた坂東玉三郎。稽古に先立ち、作品ゆかりの金沢市を訪ねた壱太郎は「玉三郎のおじさまにしっかり学び、役に向き合いたい」と歌舞伎座で初の主演に意気込む。 (安田信博)

 作品は、泉鏡花(一八七三〜一九三九年)が故郷金沢を舞台に、二十一歳の若さで書いた新聞小説「義血侠血(ぎけつきょうけつ)」が芝居向けに脚色された。華やかな水芸の太夫(芸人)白糸と法律家志望の青年、村越欣弥との悲恋を描いた。浅野川にかかる卯辰橋で再会し、貧しさのため学問を断念しようとした欣弥に金銭的な援助を申し出る白糸。そんな二人は時を経て、法廷で検事と被告人として対面する…。

 二月上旬、壱太郎は豪雪に見舞われた金沢市内を訪れ「滝の白糸像」や鏡花の生家跡にある「記念館」を見学。「白糸は義侠心(ぎきょうしん)のかたまりのような女性。ドラマチックで美しい世界観も感じられる魅力ある作品」と述べた。作品の舞台を訪れたことには「作品と役に向き合うモチベーションが一段と高まった。金沢の風土を肌に染み込ませ、玉三郎のおじさまの思いに応えて再演が期待されるような舞台をご覧に入れたい」と力強く語った。

 一月に大阪松竹座の舞踊公演で玉三郎と一カ月共演し、新派の舞台での経験などさまざまな話を聞いた。「とても濃密な時間を過ごすことができた。いい流れで稽古に入れる」と明かす。

 祖父が人間国宝の名優坂田藤十郎、父が四代目中村鴈治郎という家に生まれ育ち、進境著しい女形の壱太郎。近松門左衛門の名作「曽根崎心中」で、女形の大役お初を役柄と同じ十九歳の時に演じた。今回、白糸が法廷に立つ時の年齢二十七歳も、自身と同じ。「作品、役との運命的な出会いを実感する」と感慨深げ。法廷での「背中の演技」も見せ場の一つとアピールする。

 これまで経験したことのないせりふ量との格闘も迫られる舞台となる。「言葉は美しく、分かりやすい。二人の距離が徐々にちぢまっていく卯辰橋でのせりふの掛け合いを、とくに注目して見てもらいたい」。欣弥を尾上松也が演じ、共演はほかに坂東彦三郎、坂東亀蔵、中村米吉ら。

 「三月大歌舞伎」は三〜二十七日。「滝の白糸」は夜の部(午後四時三十分開演)で。他に「於染久松(おそめひさまつ)色(うきなの)読販(よみうり)」「神田祭」も上演。「昼の部」(午前十一時開演)は「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」「芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)」。

 チケットホン松竹=(電)03・6745・0888。

<「滝の白糸」> 1895年に川上音二郎一座が初上演。その後、劇団新派が上演を重ね、代表的演目となった。

 戦後は、新派の初代水谷八重子や当代八重子らが白糸を演じ、歌舞伎では坂東玉三郎らのほか、壱太郎の祖父坂田藤十郎も中村扇雀時代の1962年に演じた。歌舞伎座での上演は81年8月以来で、歌舞伎俳優だけでの上演は初めてという。

 

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