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【伝統芸能】

<中村雅之 和菓子の芸心>面食らった!干菓子 「花面」(京都・長久堂)

イラスト・中村鎭

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 このお菓子を初めて見た時、その出来栄えに驚かされた。仕事柄、古くから伝わってきた「本面(ほんめん)」をはじめ、数々の能面を見てきた。打った人には申し訳ないが、時には「能面もどき」を見掛けることもある。だが「じゃ打ってみろ」と言われると、自信はない。能面らしい物を打つことは誰でもできるが、見ることができる能面、つまり舞台で使えるようなものを打つのは、とても難しい。こんな能面を打てる人こそ「能面師」の名に値する。

 京菓子の老舗「長久堂(ちょうきゅうどう)」の「花面(はなおもて)」は、能面や狂言面の形をした干菓子だ。一口で口に入るほど小さい。本物の能面を打つのも難しいのに、こんなに小さければなおさらだろう。どうやら木型は能面師が打ったらしい。納得だ。

 能面の「翁(おきな)」「小面(こおもて)」、狂言面の「乙御前」「嘯吹(うそぶき)」「福の神」の五種類がある。最高級の砂糖である四国の「和三盆」を使っている。「和三盆」は、粒が細やかで口に入れるとスーと溶ける。「小面」は和三盆だけだが、「翁」には大豆、乙御前にあたる「乙羽御前」には空豆、「嘯吹」には玄米、「福の神」には抹茶が混ぜ込んであり、形だけでなく、それぞれ色や味も違う。

 京都の街中には、あちこちに能舞台や能楽堂がある。金剛流宗家、観世流の名門・片山家、狂言の茂山千五郎家もある。目も舌も肥えた京都人が生み出した非の打ちどころがない優雅なお菓子だ。 (横浜能楽堂館長)

<長久堂> 京都市北区上賀茂畔勝町九七の三、(電)075・712・4405(北山店)。「花面」6個入り864円。

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 伝統芸能とゆかりの深い和菓子を横浜能楽堂の中村雅之館長が紹介します(随時掲載)。

京都の金剛能楽堂

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