東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 放送芸能 > 伝統芸能一覧 > 記事

ここから本文

【伝統芸能】

<中村雅之 和菓子の芸心>能に熱狂した綱吉 「加賀宝生」(金沢・落雁 諸江屋)

イラスト・中村鎭

写真

 「犬公方」として名高い江戸幕府五代将軍・徳川綱吉は無類の能好きでもあった。中でも宝生流を贔屓(ひいき)した。ご機嫌を取ろうと、他流から宝生流に変わる大名も現れた。まるでサラリーマン社会の話のようだ。

 加賀藩の五代藩主・前田綱紀は、綱吉の覚えめでたく、御三家並みの厚遇を受けていたため、もちろん右に倣(なら)え。抱えていた有力役者を他流から宝生流に転流させるという荒業さえやって退(の)けた。それ以来、加賀は宝生流の一大拠点となり「加賀宝生」という言葉さえ生まれた。

 それが、そっくりそのまま落雁(らくがん)の名前になっている。作っているのは、幕末の嘉永年間創業で、菓子どころ金沢を代表する老舗「落雁 諸江(もろえ)屋」だ。

 かつて落雁は身近なお菓子だった。私の子どもの頃は、結婚式に鯛(たい)の形をした餡(あん)入りの落雁が引き出物として出たり、正月には、鯛や海老(えび)の形の落雁がお菓子屋さんの店先に並んでいた。

 しかし、私は落雁があまり好きではなかった。硬くてボソボソとしたあの感じが嫌だったからだ。その点「加賀宝生」は、羊羹(ようかん)をほんのりと塩味が効いた生落雁で挟み、しっとりとしていて食べやすい。

 この食感を出すのは難しい。もち米を加工した落雁粉と砂糖の配合は秘伝であるし、押し固める具合にもコツがある。中に羊羹を挟んだりしているので、さらに難易度は上がる。

 侮ることなかれ! 実は落雁は、奥の深いお菓子なのだ。「加賀棒茶」でも入れて、心して味わうことにしよう。 (横浜能楽堂館長)

<落雁 諸江屋(本店)> 金沢市野町一の三の五九、(電)076・245・2854。「加賀宝生」6個入り648円。

毎年6月、加賀宝生のだいご味が楽しめる薪能=金沢市で

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報