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【伝統芸能】

<中村雅之 和菓子の芸心>能にちなむ花に着想 「二人静」(名古屋・両口屋是清)

イラスト・中村鎭

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 両口屋是清は、江戸時代には尾張藩の御用も勤めた名古屋きっての老舗。その看板商品が「二人静(ににんしずか)」。食べたことはなくても、名前は聞いたことのある人は多いはず。能を知っている人であれば「二人静」と聞けば、当然、能から取ったと思うことだろう。

 「二人静(ふたりしずか)」は、源義経の愛妾・静の霊と、それに取りつかれた菜摘女(なつめ)が、一糸乱れず同調して舞うのが見どころ。私も、てっきり能から取ったと思い込んでいたが、調べて見ると、昭和の初期、11代目の主人が、庭に咲いていた山野草の「二人静(ふたりしずか)」を見ていて着想。読み方を「ににんしずか」としたのだそうだ。

 「二人静」は茶花としても人気あるセンリョウ科の多年草。茎の先に2本の穂が出ていることが多い。この2本にそろって可憐(かれん)な白い花が咲くのを静と静の霊になぞらえたのだ。

 お菓子の方は、芸術的といってよいほど繊細な砂糖・阿波和三盆でできた干菓子。小さな半球になっていて、紅白一対で薄紙に包まれている。丸い紙箱入りもあり、ふたには義経と静を思わせる男女の仲睦(むつ)まじい姿が、描かれている。描いたのは、地元・名古屋出身で、昭和を代表する大和絵の画家の森村宣永だ。

 箱を開けると、1枚の紙が入っていて、そこには俳人・中村汀女が、推薦文と共に句を寄せている。

 忘れざり花にも二人静あり

 汀女らしい気負いの無い1句を読み終える間もなく、「二人静」は、スーと口の中に溶けていく。 (横浜能楽堂館長)

<両口屋是清(本町店)> 名古屋市中区丸の内三の一四の二三。(電)052・961・6811。平箱入り864円。

観世流「二人静」から=今年2月、金沢市内で

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