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【伝統芸能】

<評>活動弁士・坂本頼光 緊迫感の中に笑い創る

 明治半ばから昭和初期にかけての無声映画の時代、日本には生演奏の音楽に乗せて筋立てを説明し、せりふを語る活動弁士がいた。トーキー映画の普及に伴い、大半が漫談家などに転身したが、現在もその話芸を継承する者はいる。坂本頼光(らいこう)もその一人。無声映画上映会を行う他、演芸会への出演もある。五月二十七日の「瑞姫(たまき)の浪曲を聴く会」(東京・浅草木馬亭)にもゲスト出演をした。

 まず「血煙高田の馬場」(一九二八年、伊藤大輔監督)を上映解説。おなじみの中山安兵衛のあだ討ち物語だ。安兵衛を大河内伝次郎、町人を伴淳三郎が演じる。

 三大あだ討ちを表す文句「一に富士、二に鷹(たか)の羽のぶっちがい、三に上野の仇桜(あだざくら)」を講談調の朗々とした発声で聴かせたかと思うと、伴淳三郎のせりふでは声色を使う遊び心も。安兵衛があだ討ちに駆けつける場面では緊迫感だけでなく、笑いも添えて息抜きをはかる。弁士という職業を愛し、研さんを積んでいると感じた。

 続いて本物そっくりの模型を使ったロシア映画「昆虫キャメラマンの復讐(ふくしゅう)」(一二年)。カブトムシの夫婦がそれぞれ不倫をしているという現代でも通用する内容だ。修羅場も昆虫が主人公なので重苦しくはならず、笑いに転化している。坂本の話術がさらになごやかな気分にさせる。

 作品の選択次第で、無声映画の説明も現代に生きる娯楽となることを示した。

 (布目英一=演芸研究家)

 

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