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【伝統芸能】

<花に舞い踊る>夕顔棚 涼む老夫婦に風情添え

藤間豊之助(左)と沢竜二

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 日本舞踊はさまざまな四季の風物を取り入れています。このコラムでは、季節の花にちなんだ作品を取り上げ、そこに流れる日本の心についてご紹介していきます。

 今回は夏の夕方、白い花を咲かせるユウガオ(夕顔)を配した「夕顔棚(ゆうがおだな)」です。夕顔棚の下で夕涼みをする老夫婦の情愛を描いた作品で、二〇一二年七月二十九日、東京・国立大劇場では婆を故藤間豊之助、爺を沢竜二が好演しました。

 江戸前期に描かれた「納涼図屏風(びょうぶ)」と、古い歌の「楽しみは夕顔棚の下涼み 男はててら(褌(ふんどし))、女は二布(ふたの)(腰巻き)して」などを題材に、一九五一(昭和二十六)年に東京・歌舞伎座で初演されました。下涼みは樹木などの陰で涼むこと。夏の夕暮れを楽しむ夕涼みという情景に、日本ならではの情緒が漂います。

ユウガオ=農研機構提供

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 老夫婦が湯上がりに夕涼みしながら酒を酌み交わすうちに、遠くから聞こえてくる盆踊りの囃子(はやし)。ふと「どちらが先に惚(ほ)れたのか」と昔を懐かしみ、婆が十七、爺が二十歳の頃に盆踊りで出会ったなれ初めを踊ります。

 今は思うように動けなくなった老体で、若い頃の踊りを踊るところに何ともいえない味わいが広がります。長い年月の間にはけんかもたくさんしてきたことでしょう。そうした日々を乗り越えて仲むつまじく過ごす老夫婦。そんな二人を見守るように、傍らに優しげに咲く夕顔の花が風情を添え、ほのぼのとした温かい情景を作り出しています。

 季節の花とともにあったかつての日常風景。こうした作品の中にも、日本人の感性がさりげなく息づいているのです。

     ◇

 舞踊評論家の阿部さとみさんの「日本舞踊と花」をテーマにしたコラムを随時掲載します。

 

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