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【伝統芸能】

<評>歌舞伎座の三國無雙瓢箪久 見ごたえある一幕に

 歌舞伎座昼の部は「三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや) 出世太閤記」。かつては大衆向けの芸能・文芸を通じてよく知られた太閤記物の場面を新たに構成したもの。

 企画のきっかけは、昭和二十八(一九五三)年に十一代目市川団十郎が羽柴秀吉を演じ、十二代目が三法師役で初舞台を踏んだ「大徳寺焼香の場」の写真。それぞれの孫にあたる市川海老蔵と堀越勸玄が同じ役を演じ、四代にわたるゆかりの場面となった。

 明智光秀の子、重次郎が切腹する「松下嘉兵衛住家の場」は、奴姿で登場する海老蔵の秀吉をはじめ、中村雀右衛門の皐月(さつき)、中村東蔵の嘉兵衛妻呉竹、片岡市蔵の伍助、中村児太郎の秀吉女房八重がよく、見ごたえのある芝居らしい一幕。

 夜の部は新台本による「源氏物語」。オペラ、能楽、華道、プロジェクションマッピングと、多様な表現を盛り込んだ贅沢(ぜいたく)な舞台。しかし、それぞれの表現には目をひきつけられるものの、それらがうまく融合して人間のドラマを描き出すには至らなかった。どの世界でも異質なもののコラボレーションを「並べただけ」に終わらせないのは極めて難しい。台本・演出を練り直しての再演に期待したい。二十九日まで。

 国立劇場では歌舞伎鑑賞教室の来場者が六百万人を達成した。しかし、六月の演目は「連獅子」、七月は「日本振袖始(にほんふりそではじめ)」と、いずれも舞踊・舞踊劇の一本立て。歌舞伎を初めて見る観客にはわかりにくい演目だったが、企画の現実的な難しさも察せられる。歌舞伎の興行隆盛の中でその意義と重要性を再認識したい。国立劇場での公演は二十四日まで。二十六、二十七日は神奈川県立青少年センター紅葉坂ホールで公演。 (矢内賢二=歌舞伎研究家)

 

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