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【伝統芸能】

「菓子の神」舞台降臨 遠国からタチバナ「田道間守」ことほぐ

 日本書紀に記された「菓子の神」を題材にした新作能「田道間守(たじまもり)」が29日午後6時から、東京・国立能楽堂で上演される。サッカーの神様、将棋の神様など、日本にはさまざまな神様がいるが、お菓子の神様は兵庫県豊岡市の神社にまつられていて、能には町おこしの期待が込められる。能舞台に神は降臨するか−。 (神野栄子)

 田道間守は、十一代垂仁(すいにん)天皇の命を受け、海のかなたにあるとされる常世(とこよ)の国から貴重な「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」(タチバナ=橘=の実)を持ち帰ったという。柑橘(かんきつ)類の一種タチバナは菓子の「元祖」「最上級品」として珍重され、豊岡市の中嶋神社ではタチバナを見つけてきた田道間守命をまつり、「菓祖」「お菓子の神」として知られるようになった。

 新作能は、市内で能のワークショップを開いていた京都を拠点に活動するシテ方観世流の田茂井(たもい)広道(48)が、演劇版の「田道間守」を鑑賞し、能に仕立てて上演したいと申し出たのがきっかけ。田茂井が脚本を担当し、御代の平和、菓子の功徳をことほぐ内容に仕立てた。

 旅人(田茂井広道)が、豊岡の円山川で老人(観世喜正)に会う。この老人は菓祖・中嶋神社を語り始め、自分こそが田道間守の神と名乗り、姿を消す−。豊岡の小学生たちが唱歌「田道間守」の合唱で参加する異色作だ。

 二〇一四年に豊岡で上演され大好評。今回は初の東京公演を前に、二十二日には四年ぶりに豊岡市民プラザでの再演もある。岩崎孔二館長(63)は「全国にタチバナに由来したお菓子を作る菓匠がいると聞く。菓子の神をめぐる能公演が交流の機会になれば」と期待を寄せる。

 橘の精が華やかに舞い、菓子の功徳や但馬地方(兵庫県北部)の繁栄をことほぐ後半も見どころ。田茂井は「菓子が人と人をつなぎ、平和に導くというメッセージが観客に届けばうれしい」と話す。

 国立能楽堂=(電)03・3423・1331。

◆橘諸兄から56代目 梅若実演出で特別な仕舞も

 演出はシテ方観世流の人間国宝、梅若実(70)が担当する。タチバナにちなんで当日は、観世流の名門一流派、梅若家当主のみに許される仕舞「橘」を久々に披露する。梅若家のルーツもたどりながら、新作能の魅力を語った。

−演出で気を使ったことは?

 (子どもたちが登場するなど)さまざまな舞台転換、これは難しい。観客の目線で楽しく見やすく、スムーズに流れる演出を心掛けた。

−新作は豊岡が舞台。ご当地能の良さは?

 今回は地元の子どもが登場しますが、こうしたことがご当地能の親しみやすさ。新作公演を定着させるには、子どもたちに伝えることが大切なんです。

−梅若家と仕舞「橘」との関わりは?

 うちの先祖は、朝廷の有力者、橘諸兄(たちばなのもろえ)(六八四〜七五七年)。僕で五十六代目。仕舞「橘」は祖父の二世実(一八七八〜一九五九年)が、詩人の大和田建樹(たけき)(一八五七〜一九一〇年)に詞章を依頼し、祖父が節付けして昭和初期につくった。梅若家の家紋と同じに大事な仕舞です。

−どんな時に舞う?

 特別な催しにしか出しません。僕もこれまで二度舞っただけ。今回は橘に由縁のある特別な公演なので舞います。衣裳(いしょう)も能舞台ではまずあり得ない長袴(ながばかま)をはきます。荘厳な舞で気が引き締まり緊張します。

 

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