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【伝統芸能】

<お道具箱 万華鏡>肩衣 太夫の芸・人格映す

竹本駒之助所蔵の古い肩衣。表は帯の布。裏地は繻子(しゅす)

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 「肩衣(かたぎぬ)」という言葉をご存じだろうか。裃(かみしも)はツーピース形式になっていて、下が袴(はかま)、上を肩衣という。肩幅がやけに広い不思議な形だ。日常ではあまり目にしないが、芸能の世界ではよく着用されている。

 文楽でおなじみの義太夫節を女性が語る、女流義太夫というジャンルがある。略して女義(じょぎ)。彼女たちのユニフォームも肩衣だ。女義の公演では、黄色や桃色、花柄など華やかな肩衣が登場して、目も楽しい。

 女流義太夫の人間国宝、竹本駒之助さんに肩衣について話をきいた。

 義太夫は、言葉を語る太夫と三味線弾きによって演奏される。駒之助さんは太夫。

 「肩衣はね、太夫の自前。だいたい同じ柄で三枚、作ります」。一枚は自分用、あとの二枚は三味線奏者のためだ。「三味線弾きは、三味線という道具にお金がかかるでしょ。だから肩衣は太夫が負担するんですよ」

 肩衣は仕立てに工夫がされていて、直線を出すために竹ひごを縫い込んだり、裏に紙を貼ったりしてある。それで奴凧(やっこだこ)のような張りが出る。

(左から)駒之助、鶴沢津賀寿=2010年3月、国立演芸場で、福田知弘さん撮影

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 色や柄は演目の内容に合わせてセレクトする。女義は、素浄瑠璃(すじょうるり)といって、人形をともなわない上演形式をとる。肩衣は物語の情景を表す大事なツールでもあるのだ。

 「肩衣の着方を見れば、芸も人格もわかる」と駒之助さん。洋服のように完成された形ではないため、まとい方や姿勢でグズグズになったり、びしっと決まったり。心がけを映す鏡だ。

 さあ、舞台を見たくなったら女義の演奏会へ(詳細は義太夫協会のHPで)。NHK古典芸能鑑賞会(九月三十日、NHKホール)には駒之助さんも登場する。絶品の語りとともに肩衣にもご注目を。

(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

 

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