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【伝統芸能】

弦メーカーの挑戦 滋賀・丸三ハシモト 「一音」重視で信頼紡ぐ

 邦楽器市場が縮小し続けている中、品質に磨きをかけ、奏者に配慮したきめ細かな商品を届けることで好調を維持する三味線や箏の糸(弦)メーカーがある。1908(明治41)年に創業した滋賀県長浜市の「丸三ハシモト」は効率性よりも「一音」を重視、邦楽界から高い信頼を得ている。近年は中国の伝統楽器の再興にも一役買っているという、琵琶湖北岸の老舗工場のチャレンジとは−。 (藤浪繁雄)

 長唄、津軽、民謡、義太夫…。三味線だけでも多種多彩な糸を作る。「三味線糸の中には年間数本しか出ない製品もある」と話すのは四代目社長の橋本英宗(ひでかず)さん(44)。音色、手触り、張り具合などを追い求めた糸には、大阪を本拠とする人形浄瑠璃文楽の三味線奏者はじめ全国のプロ奏者らの愛用者があまたいて、日々注文が絶えない。

 千年ほど前から養蚕、製糸業が盛んだった地域で、丸三ハシモトは糸づくりを続けている。最近は他の地域から買い付けた繭で生糸を作り、二十近い細かな工程を経て完成させる。中でも重要なのはねじり合わせていく「撚(よ)り」という作業。楽器の種類や用途によって異なる太さの糸を作っていくために欠かせない。機械を使うが、細心の注意を払って糸を張り、適度な湿気を含ませるなど、職人たちは製品にムラが生じないよう神経を注ぐ。

◆多品種少量生産

 微妙な音色や触感などにこだわる余り、時に想定外の注文も舞い込むと言うが「『何とかなる』というのが社風。要望に合わせて作っている」と橋本さん。十一人のスタッフで、工程に工夫を凝らしながら数百種の糸、化学繊維の素材でも製造している。糸(弦)の種類は約四百種。「効率化よりも、逆に手間がかかるようになってしまった」と苦笑いするが、「多品種少量生産」の態勢は危機的状況が続く邦楽器市場でのチャレンジでもある。

◆中国でも高評価

 同社の技術は、中国でも関心が高まっている。数千年の歴史があるという古琴が二〇〇八年北京五輪の開会式で披露され、その音色が中国内外で話題となった。しかし、弦はスチール製ばかりと知った橋本さんはその後、上海であった楽器関連の展示会に絹の弦を出品したところ、新進気鋭の古琴奏者の王鵬さんがその質感や音色を高く称賛し、同社の製品がじわじわと浸透した。二胡(にこ)や琵琶用にも製造し輸出量は増えている。

 中国製の三味線や箏は少なくないが、この分野で中国へ輸出する商品は珍しい。「(製品の)付加価値を高められる商機を探していた。(日本の)市場は飽和状態だが、培ってきたノウハウを生かせるよう考えてきた」と橋本さん。百十年の伝統を守り邦楽を支えながら、シルクロードを西へ“逆走”する「絹弦ルネッサンス」の夢も膨らませている。

<邦楽器の製造個数> 全国二百余の邦楽器メーカーなどでつくる全国邦楽器組合連合会が今春、一九七〇〜二〇一七年の製造数(推計値)の推移を発表。三味線は81%、箏は85%の大幅減で、ともに国産品は90%以上減。メーカーや卸業者の数も減っているとみられる。

 

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