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【伝統芸能】

<舞踊>花柳寿南海さん死去 慈愛にじます舞、最後まで

 11日に93歳で死去した日本舞踊家の人間国宝で、文化功労者の花柳寿南海(としなみ)さんを舞踊評論家の阿部さとみさんが悼んだ。

 「自分の舞台評を読んでいるうちに、褒めた内容の中に自分の芸の足りなかった部分が見えてくる」。かつてそう語ったと聞く。深い洞察力を物語る逸話だ。

 小柄ながら、その技芸は大きな劇場の隅々まで余すところなく届いた。緩急自在の表現力は、作品世界を大きく膨らませ、舞台には数多くの観客が集まった。寿南海さんは二代家元花柳寿輔の下で長年内弟子の修業を積み、若い頃には清元「子守」を得意として名を広めた。身体をキビキビと使い、主人公である田舎娘の純朴な様を良く映していたという。

 晩年には山に住み霊力を持つ老女や山姥(やまんば)を題材にしたさまざまな作品を手がけ、抑制の利いた動きの中に慈愛をにじませた。これは長年存分に身体を使った経験を経て初めて得られる芸で、日々のたゆまぬ研さんがしのばれた。

 日本舞踊には「古典」と呼ばれる歌舞伎舞踊を元にした作品と、「創作」の二つの大きな柱がある。寿南海さんも古典ばかりでなく、創造面にも力を発揮し、「火」「土」「吾輩(わがはい)は猫である」など、芸術性の高い魅力的な振付作品を多数発表。創作舞踊の幅を広げた。

 また、温厚な人柄は多くの舞踊家に慕われ、後進の指導にも尽力し、門下からは有望な次代の担い手を多く輩出した。もうあの温かみある確かな芸を見ることができないのは寂しい限りだが、寿南海さんののこしたものは大きく、その志は受け継がれていくことだろう。

 

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