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【伝統芸能】

<中村雅之 和菓子の芸心>まずは想像膨らませ 「隅田川」(東京都豊島区・千鳥屋総本家)

イラスト・中村鎭

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 四季がはっきりしている気候の中で育まれた和文化の世界では、俳句の「季語」や「季節の和菓子」といったように、何かと季節が登場する。

 能の世界にも季節がある。謡本などには、それぞれの曲の季節が記されている。季節を問わずというのもあるが、大抵は、いずれかに属している。

 その中で、圧倒的に多いのは春と秋の曲。能の世界に「春の隅田川 秋の三井寺」という言葉があるように、中でも代表は、この2曲だ。

 隅田川は、最愛の息子を人買いにさらわれた母が、狂女となりながらも、行方を尋ね歩いた末に隅田川の畔(ほとり)に辿(たど)り着く、というところから物語は始まる。

 物語が進むにつれ、息子は病を得て、その地で亡くなり、対岸の塚に葬られていることが明らかになる。

 能では、子と生き別れる話は他にもあるが、再会できず悲劇的な結末を迎えるという曲は珍しい。対の片割れである「三井寺」でも、親子は無事に再会を果たす。

 千鳥屋総本家の「隅田川」は、黄身餡(あん)をシナモン風味の皮で包んで焼いたお菓子。

 初めてこれを見た時、すぐに浮かんだのは「これは確かに、塚のような色と形をしている」ということ。

 とはいっても説明書にも名前の由来などは書かれていないので、真偽のほどは不明だ。まったく勝手な妄想かもしれない。

 おいしそうなお菓子を目の前にしても、すぐにパクリといってはダメ。まずは我慢我慢。形を見て、あれこれ想像を膨らませる。これもお菓子の楽しみ方の一つだ。 (横浜能楽堂館長)

   ◇

 千鳥屋総本家(巣鴨店) 東京都豊島区巣鴨三の二七の八。(電)03・3917・4166。6個入り1080円。

能「隅田川」の一場面

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