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【伝統芸能】

異形の三味線 競演 コントラバス風「豪絃」など多彩 18日、国立小劇場

 コントラバス? マンドリン? いえいえみんな三味線です−。長唄界のパイオニアが考案したという珍しい三味線が集結する異色の演奏会が十八日午後零時半、東京・国立小劇場で開かれる。巨大三味線、マンドリンのような高音三味線などが披露される予定で、演奏会の担当者は「長唄になじみのない方にも、楽器の楽しさを伝えたい」と話す。 (神野栄子)

 独創的な邦楽器は大正末期から昭和初期にかけて誕生した。明治期に洋楽器が普及し始め、邦楽家の中から「邦楽器を次代に残そう」と声が上がり、実際に手掛ける動きが出てきた。長唄三味線方の四世杵屋佐吉(一八八四〜一九四五年)もその一人。超低音でコントラバスのような巨大三味線「豪絃(ごうげん)」を考案した。一九二四年十二月には、豪絃用の曲「山嵐」も発表した。

 四世の孫で当代(七世)佐吉(65)は「祖父は洋楽と邦楽を比較研究し、器楽の合奏に着目。特に低音にこだわった」と話す。しかし、使い勝手はいまひとつだったようで「物置に転がっていた」と明かす。約四十年前、当代佐吉が興味を持ち、改良を重ねた。それが現存の豪絃。重さ約三十キロ、全長約百七十五センチ。胴は四十五センチ×四十センチ、胴や棹(さお)には堅固なカリンの木を用いている。

 「立って弾く方が重さを感じない」と言い、弾きやすさを考えてコントラバスのように弓奏(きゅうそう)している。奏でる超低音は床が振動するほど、圧巻の響き。数年に一度演奏している佐吉は「練習しないと弾けないし、体力と高度な技術を要する。アンサンブルの曲を作り、専門の演奏家が育てば」と将来性に期待する。

 マンドリンのようなトレモロ奏法もできる「シャミドリン」と呼ばれている高音三味線もある。演奏家で作曲家の稀音家(きねや)六治(後の山田抄太郎、一八九九〜一九七〇年)らが長唄の可能性を追求して一九三〇年に「長唄研究所」を設立。シャミドリンを考案し、翌年の第一回演奏会でオリジナルの合奏曲「夜遊楽(やゆうがく)」を初披露した。

 高音三味線は全長六十三センチ、円形の胴は直径十九センチ、棹も四十センチと小型。東京芸術大教授も務めた山田は芸大出身者らで組織する長唄演奏と研究団体「東音会」を設立。同会は代々、高音三味線での演奏を受け継いできた。今年六月の地方公演で、初めて弾いた東音川辺孝子(52)は「一般的な三味線とは違い、調弦が難しい」と感じた。

 初競演は長唄協会主催の「秋季定期演奏会」で実現する。特別企画「三味線いろいろ」では、細棹を基本に「豪絃」「高音」のほか、チェロのような低音三味線も登場。コントラバス、マンドリン、チェロのような味わいで「ロンド」「合奏曲鶴亀」の二曲を披露する。

 長唄協会=(電)03・3542・6564。

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 三味線など邦楽器全般の変遷に詳しい中村雅之・横浜能楽堂館長に豪絃の音色の録音を聴いてもらうと「伝説的な巨大三味線の写真を見たことはあるが初めて聴いた。地に響き渡る重厚な音色」と驚いた様子。大正末期から昭和初期にかけて「和洋音楽が渦潮のようにぶつかり合っていた。そんな中で実験楽器の開発に挑戦した邦楽家も多かった」と説明する。それから約90年後に豪絃が現存することを知り「これを生かせるような曲が作れれば面白い」と期待を寄せた。

 

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