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【伝統芸能】

<評>阿古屋が抜群 国立劇場「二月文楽公演」

 「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」(第一部)、「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」(第二部)、「〓山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」(第三部)と分かれ、名作が並ぶ。いずれも、幕末から明治、大正、昭和と、名人たちが至芸を見せてきた作品だ。

 「桂川−」は、京都・桂川であった事件をもとに脚色された作品。帯屋の跡取り長右衛門と、年の離れた十代の娘お半の物語。「帯屋の段」を語る豊竹咲太夫は、女性の鑑(かがみ)といわれる長右衛門の妻お絹を丁寧に語る。とりわけ繁太夫節の「私も女子(おなご)の端じゃもの…」にはしびれる。

 「大経師−」は、暦を発行する店を構える大経師以春の妻おさんが手代の茂兵衛と、人違いをしたことから過ちを起こしてしまい、さまざまな人間模様が展開するという近松門左衛門の名作。「大経師内の段」の竹本文字久太夫は、金策の苦悩が言葉の端々によくにじみ出る語りで、聴くものを魅了する。

 「壇浦兜軍記」の「阿古屋琴責(あこやことぜめ)の段」は歌舞伎でも上演され、よく知られた演目。時代物のセットの美しさをあらためて痛感した。重忠に琴、三味線、胡弓(こきゅう)の三曲を次々に弾かされ、内面を試される遊君阿古屋。どの場面も、思う人と離れた阿古屋の悲痛な内面が感じ取れるが、とりわけ見事なのが、三味線を弾きながらの「翠帳紅閨(すいちょうこうけい)」の一節。桐竹勘十郎(人形)の阿古屋は抜群の出来栄え。吉田玉助(人形)の重忠にも気品が出てきた。十八日まで。

  (倉田喜弘=芸能史家)

※ 〓は、庚に鳥

 

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