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【ベルギー奇想の系譜展】

死と生 恐怖と快楽 交錯の先に 19日〜5月7日まで宇都宮美術館

ヒエロニムス・ボス工房「トゥヌグダルスの幻視」 1490〜1500年ごろ 油彩、板 ラサロ・ガルディアーノ財団(c)Fundacion Lazaro Galdiano

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 「ベルギー奇想の系譜展」が、十九日から宇都宮美術館で開幕する。ブリューゲルが描く奇妙な怪物、マグリットの不思議な風景など、現在のベルギー・フランドル地方では独特の奇想・幻想絵画が発展してきた。本展では、十五、十六世紀を代表するボスやブリューゲルから、象徴主義、シュールレアリスムの作家を経て、現代のヤン・ファーブルに至るまで約百三十点を紹介し、五百年にわたる「奇想」の系譜を探る。

 今回、日本初公開で本展注目の「トゥヌグダルスの幻視」について、国学院大教授(西洋美術史)の小池寿子氏が解説した。

◆「トゥヌグダルスの幻視」 小池寿子・国学院大教授が解説

 まずは巨大な頭部に仰天。空洞の眼孔、木の生えた耳、金銀貨を出す鼻をもち、口のような大桶では裸体の修道士と女が浸る。「邪淫(じゃいん)」の罪だ。周囲には「怠惰」、「大食」、「貪欲」、「激怒」、「嫉妬」、「傲慢(ごうまん)」の大罪とその懲罰が描かれている。

 中世人はつねに、「死」と「最後の審判」、「天国」と「地獄」、つまり四終を心に留めて生きよと教えられ、地獄行きのこれら七大罪はとくに避けるべしとされた。しかし人間は、目(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、口(味覚)、皮膚(触覚)を刺激する快楽に弱い。ではどうすれば天国に行けるのだろう。こうして死後世界への関心から多くの旅行記が著された。死者が生き返って語るといういわば臨死体験譚(たん)だ。

(左)傲慢を表す部分 (右)怠惰を表す部分

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 抜群の人気本は、アイルランドの放蕩(ほうとう)騎士が三日間の死後体験を語る『トゥヌグダルスの幻視』。彼は、天使に連れられて身の毛もよだつ九つの拷問場をめぐり、闇の帝王ルシファーと遭遇、ついで九つの栄光の場を見た後に生き返り、享楽生活を悔い改める。道徳物語だが、一種の娯楽文学になっている。

 難しい教訓本では人は満足しない。同じく人気本『阿呆舟(あほうせん)』は、平気の平左で罪を犯す愚か者が、通りや横町にもあふれていると痛快に風刺する。死と生、恐怖と快楽が交錯する時代に奇想は生み出されるのである。

◆東京展は7月15日開幕

 「ベルギー奇想の系譜展」(宇都宮展)は宇都宮美術館で、十九日から五月七日まで開催。問い合わせは、同館=(電)028(643)0100=へ。東京展はBunkamura ザ・ミュージアムで、七月十五日から九月二十四日まで。問い合わせは、ハローダイヤル=(電)03(5777)8600=へ。

 

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