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「大ダルマ制作200年記念 パフォーマー☆北斎 〜江戸と名古屋を駆ける〜」展

<展覧会作品より>(5)庶民の感情とシンクロ

葛飾北斎「百物語さらやしき」1831〜32(天保2〜3)年頃 すみだ北斎美術館(後期展示)

写真

 江戸時代の長期の「平和」と「文明化」は、庶民生活に怪奇伝説や幽霊を生み出した。怪談を持ち寄る「百物語」の夜会も、庶民が育てたイベントである。

 北斎の「百物語さらやしき」は、百物語の一つ「番町皿屋敷」「播州(ばんしゅう)皿屋敷」をモチーフにする。「皿屋敷」は、武家屋敷に仕える女中のお菊が、皿を一枚なくしたという理由で主人に殺され、井戸に投げ込まれるという悲劇で、当時広く知られる怪談のスタンダードであった。

 「一枚」「二枚」と井戸の底から聞こえる声に、庶民は、たんに恐怖したのではなく、理不尽に殺されたお菊に同情した。あらためて画を見ると、井戸から出てくるお菊の表情ははかなく悲しい。胴体には皿が連ねられ、口からの霊気は、歎息(たんそく)とも「一枚」「二枚」のせりふが吐かれているようにも見える。北斎は、庶民感情とシンクロするように、恐怖よりもお菊の深い悲しみを描いたようである。

 (大石学・東京学芸大副学長)

 本展は10月22日まで、すみだ北斎美術館で開催中。10月3日から後期展示。月曜日(10月9日は開館)と、10月10日は休館。問い合わせはハローダイヤル=(電)03(5777)8600=へ。

 

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