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【ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力】

(1)「祈る女と鴉」 鴉に透ける暁斎の影

 東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「これぞ暁斎!」展(東京新聞など主催)に並ぶ作品の魅力を、五回にわたって著名人に語ってもらう。

河鍋暁斎「祈る女と鴉」 1871〜89年 絹本着彩 イスラエル・ゴールドマン コレクション (c)Israel Goldman Collection, London Photo:東北芸術工科大学 杉山恵助

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◆ロバート・キャンベルさん(東京大学大学院教授)

 謎めいた風景に、想像が膨らむ。女はなぜ祈るのか。

 日が暮れなずむ座敷の縁側。遊女は風呂上がり、汗が引くのを待つ間にうつむき加減で一点を見つめている。それをぐっと前景から拡大させた格好で鴉(からす)が眺める。忙しい夜の、支度に入る前の一コマである。

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 髪を江戸初期にはやった唐輪髷(からわまげ)に結い、紫陽花(あじさい)模様の長襦袢(ながじゅばん)をぞろりと身に纏(まと)った遊女は、腰の辺りに紅白の紐(ひも)を垂らしている。庭に可憐(かれん)な花を付けた合歓木(ねむのき)が植えてある。葉っぱは開いている。しかし絵師は、薄墨で夜気を描き、簾(すだれ)の衝立(ついたて)の間から部屋に滑り込ませるのを忘れていない。昼と夜が交わる時刻と見受ける。

 水をたっぷり張った角盥(つのだらい)が後ろにある。角盥は、七夕の夜に縁側に出して、牽牛(けんぎゅう)と織女の星を水に映してその光で針穴に糸を通そうとするが、通れば「吉」となる。合歓木も紅白の紐もともに乞巧奠(きっこうでん)、つまり七夕の祭事にまつわるものばかりである。

 さて遊女は芸の上達を祈っているとして、遊女を私たちに近い場所から見守る鵲(かささぎ)ならぬ、鴉は何者か。私には他ではない、鴉の絵で一世を風靡(ふうび)し、画道への精進を誓った画鬼・河鍋暁斎その人の影が透けて見える。

 ※「これぞ暁斎!」展は4月16日(日)まで。問い合わせはハローダイヤル=03(5777)8600=へ。

 

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