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モネ それからの100年

<睡蓮へのまなざし>(下)鈴木理策さん 連作写真「水鏡」

クロード・モネ「睡蓮、水草の反映」1914〜17年 油彩、キャンバス ナーマッド・コレクション(モナコ)

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 「印象派の巨匠」であるクロード・モネの現代性について触れた前回(1日朝刊)に続き、今回は、この画家が生まれた背景を考えてみよう。そこには、18世紀後半から欧州で進んだ社会の近代化がある。

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 印象派が登場したのは十九世紀のフランス。人口が急増し、鉄道の整備も進み、大都市が生まれる最中にあった。王侯貴族たちの力もなくなる中で、画家たちの関心は歴史や宗教といった旧来の主題から「今を描くこと」へと向かう。そこからサロン(官展)を脱した新しい絵画運動として、印象派が台頭した。

 その流れを、『怖い絵』などの著書がある西洋文化史家の中野京子さんは「さまざまな要因が絡み合い、起こるべくして起きた“革命”だった」と説く。

 要因の一つは芸術にまつわる産業技術の進化だ。とりわけ絵画の世界に大きな影響をもたらしたのは、屋外で使えるチューブ式の絵の具と、写真の発明だといわれる。

 新しい絵の具を用いた写生は、自然光というモチーフにつながった。そして現実を高度に再現できるカメラの誕生は、写実を追究してきた絵画の存在意義を脅かすことにもなった。「何をもって写真との差を出すか。一番はタッチだったと思う。何を描くかより、どう描くかが重要になってきたのです」と中野さん。

 一方で、絵画にできて、写真にはできないことも、考えてみれば多い。写真のほうも絵画の影響をうけながら、芸術の一つのジャンルとして進化してきた。

インタビューに答える写真家の鈴木理策さん=台東区で

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 では、現代の写真家は絵画を、モネを、どう意識しているのだろう。

 「モネ それからの100年」展への、鈴木理策(りさく)さん(55)の出品作は「水鏡(みずかがみ)」と題した連作の写真だ。水面に浮かぶ睡蓮(すいれん)の葉と、そこに映り込む空や木々が収められている。モネの「睡蓮」へのオマージュにも見えるが、それを意識して撮られたものではない。鈴木さんは「言われてみれば、そうだったという感じ」と話す。

 むしろ、最初にあったのは「見るという行為」そのものへの関心だという。例えば湖を見る時、人の目は水に映る景色、水面、水の中という三つの層を行き来して、景色を認識する。「でもカメラは、そのどこかにピントを合わせるしかない。だから写真として表れるイメージは、私たちが肉眼で見る経験とはギャップが生じるんです」。ピントの置き方の違いによって違う事実が見えることを示したのが、この連作というわけだ。

 「けれどモネは、この三つの層を一枚の絵に同居させている。だから鑑賞者は、自分の記憶の中にある水面を呼び起こすことができる。モネはイメージを描いたように思われるけれど、実は見ていることを忠実に描いているのだと思いますよ」

 睡蓮の浮かぶ池というモチーフに引き寄せられ、最晩年まで水に映る光の見え方を追究した「巨匠」。時を飛び越え、水面を介して、現代の表現者との共通項が浮かび上がる。

 文・中村陽子/写真・朝倉豊

鈴木理策(左)「水鏡14,WM−77」 (右)「水鏡14,WM−79」(いずれも2014年、作家蔵) (c)Risaku Suzuki, Courtesy of Taka Ishii Gallery

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◆「モネ それからの100年」

 7月14日〜9月24日、横浜市西区みなとみらいの横浜美術館で開催(主催:東京新聞、横浜美術館、テレビ朝日 協賛:トヨタ自動車、三井住友海上火災保険、光村印刷)。8月16日を除く木曜休館。一般1600円(前売り券1400円)、大学・高校生1200円(同1000円)、中学生600円(同400円)、小学生以下無料。前売り券は13日まで販売。チケットは同館、東京新聞販売店(一般前売り券のみ)、展覧会ホームページ(「モネ」「横浜」で検索)、主要プレイガイドで販売。同館へは、みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみらい駅」3番出口から徒歩3分、JRと横浜市営地下鉄「桜木町駅」から「動く歩道」利用、徒歩10分。問い合わせは、ハローダイヤル=電03(5777)8600=へ。

 

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