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モネ それからの100年

モネ展 時代と文脈を超えて 茂木健一郎

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 印象派を代表する画家クロード・モネ(1840〜1926)と現代アートとの時代を超えた結びつきを紹介する「モネ それからの100年」展(東京新聞など主催)が、横浜・みなとみらいの横浜美術館で開催中。モネの初期から晩年の作品25点と、後世代の26作家による絵画・版画・写真・映像66点を一堂に展覧できる本展の魅力について、脳科学者の茂木健一郎さん=写真=に寄稿してもらった。

◆「今、目の前」の芸術体験

クロード・モネ《睡蓮、水草の反映》 1914−17年 油彩、キャンバス ナーマッド・コレクション(モナコ)

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 「モネ それからの100年」。私は、画期的な意味を持つ展覧会だと感じた。

 何よりも、クロード・モネの傑作と、その影響を受けたと考えられる現代美術の作品を並べるという構成が良い。新しい発見がある。思わぬ魅力に目が開かれる。加えて掛け値なしに素晴らしかったのが、展示によって引き出された観客のふるまいだった。

 私が訪れたのは、八月のお盆休みも明けた平日の夕方。たくさんの方が訪れていた。モネの傑作はもちろん、マーク・ロスコやアンディ・ウォーホルといった作家による充実のラインアップをみなさん熱心に見ていた。

福田美蘭《睡蓮の池》 2018年 アクリル/パネルに貼った綿布 作家蔵

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 そのうち、私はあることに気づいて、はっと心を打たれた。身体全体に感動が広がっていった。何か途轍(とてつ)もないことが展覧会場で起こっているように感じられたのである。

 周囲のお客さんたちは、モネも、ロスコも、ウォーホルも、中西夏之も、岡崎乾二郎も、鈴木理策も、すべて「フラット」に見ていた。時代や、美術史上の文脈を超えて、ただ作品として、そのままに感じていた。

 「印象派」とそれ以外、「日本」と「外国」という区別もない。ただ、「今、ここ、目の前」の純粋な芸術体験がある。若い人たちも、シニア世代も、目を丸くして、時にはため息をついて、初めて芸術を見る子どものように、作品に向き合っている。横浜美術館の中に、地上から少し浮遊したような魔法の空気がつくり出されていた。

 展覧会は、時折、「奇跡」を起こす。作品との出会いによって、自分自身が更新される。そのような思いもかけぬ贈り物が、「モネ それからの100年」の緻密に練り上げられた構成によってもたらされた。

 モネの《睡蓮(すいれん)》から、美しくも幻想的な夜景を描いた福田美蘭さんの《睡蓮の池》に至る体験の流れは、まるで甘美な夢のよう。

 夢から覚めて横浜の街を歩く私は、周囲の景色をまるで違ったふうに見ていた。そして、このような展示を可能にしたモネの作品の吸引力を、改めて感じたのである。

     ◇

 横浜美術館で24日まで。木曜休館。午前10時〜午後6時(14日、15日、21日、22日は午後8時半まで)。入館は閉館の30分前まで。観覧料など問い合わせはハローダイヤル03・5777・8600。

 

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