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【言わねばならないこと】

(26)異論許さぬ異常さ 言論法学者・山田健太氏

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 中世以降、情報の流れは支配者から市民への一方向しかなかった。情報公開制度ができ、インターネットも普及したことで、政府と市民が情報を共有する新しい市民社会ができる環境は整った。それなのに、情報隠蔽(いんぺい)法ともいえる特定秘密保護法という逆方向の流れができ、愕然(がくぜん)としている。

 今年になって、漫画「美味しんぼ」の表現をめぐる問題が起きた。内容が事実かどうかはともかく、漫画の表現を閣僚がこぞって批判した。沖縄県の自衛隊基地に関する琉球新報の記事で、防衛省が日本新聞協会に抗議した。政府が「異論を許さない」という強い態度を示している。戦後にはなかった異常さだ。

 秘密保護法では、特定秘密の指定をチェックするため内閣官房に「保全監視委員会」、内閣府に「情報保全監察室」が置かれるが、身内の形式的な見張りにとどまる恐れがぬぐえない。このままでは秘密の監視でなく、現場の決定を追認する組織になりかねない。

 この法律には反対だが、できてしまった以上、歯止めなく秘密が拡大されないよう、監視組織が政府を見張る必要がある。そのためにはメンバーの人選や組織面での独立性が欠かせない。調査に強い強制力を持たせることも重要だ。

 こうした条件は、国会の情報監視審査会にも当てはまるのに、与党は最低限の条件も満たさない審査会を設置。司法も沖縄返還をめぐる密約公開請求訴訟の最高裁判決で、あるはずの文書について政府の説明責任を免除した。国会や司法に期待できないなら、ジャーナリズムを含めた市民社会の力で監視するしかない。

 <やまだ・けんた> 1959年生まれ。専修大教授。専門は言論法。英国エセックス大・人権法研究所客員研究員など歴任。

 

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