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【言わねばならないこと】

(31)日中の危険度高まる 前駐中国大使・丹羽宇一郎氏

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 日本は戦後約七十年にわたり、平和憲法のもと、他国で人を殺さずにきた。そのことで世界から尊敬もされてきた。その憲法の解釈を一つの内閣が百八十度変えてしまうことは、七十年の歴史を変えてしまうことであり、いまだ国民は納得していない。パブリックコメント(意見公募)やタウンミーティングを通じて、もっと説明するべきだ。このままでは「自民党、安倍政権の独走」という思いが強まり、民主主義の国とは言えなくなる。

 憲法解釈の変更の理由について、安倍政権は「安保環境が厳しくなった」と説明している。

 最近、発表された防衛白書でも、中国を「高圧的」と批判を強めている。事実ではあるが、相手を刺激すればするほど事態はさらに悪化する。

 日本にとって、中国は最大の貿易相手国だ。日本の経済には中国がしっかり組み込まれている。隣国同士の指導者が就任して二年近くになるのに、会うことさえないというのは世界の珍事だ。こうしたことを両国首脳は認識するべきだろう。とても両国国民の利益になっているとは思えない。

 専守防衛や武器輸出三原則を変え、よその国に自衛隊が出かけるようになれば、よその国からも日本にやってくる。間違いなく、危険度は高まる。

 戦争には、安倍晋三首相が言うような「必要最小限度の実力行使」はありえない。軍人は常にベストを尽くすものだからだ。

 世界の信頼を得た平和国家日本は人を殺したり、死の商人になってはいけない。

<にわ・ういちろう> 1939年生まれ。伊藤忠商事の社長、会長を経て2010年から12年まで、民間出身として初の駐中国大使。

 

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