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【言わねばならないこと】

(44)憲法 戦死者の声代弁 こまつ座社長・井上麻矢さん

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 父の井上ひさしから「憲法は戦争で亡くなった人たちが命を懸けて勝ち取った言葉だ」と、幼いころから聞かされてきた。国のために死ぬという戦時の少年たちの価値観。それを将来の夢を語れるようにしてくれたのが憲法だった。「だから年を取れば取るほど憲法が好きになる」と。

 七月六日から東京・新宿でこまつ座が上演する、原爆投下から三年の広島が舞台の「父と暮(くら)せば」は、生きていく私たちが人の死から何を学ばねばならないのか、などがテーマだ。父は「戦争で亡くなった人は語れないが、代わりに語っているのが憲法」と言った。憲法を超えるようなものが議論されている今だからこそ、この劇をやり直したい。

 集団的自衛権の行使を可能にする安保法案が国会で審議されている。憲法で守られていたことの変更が安倍首相独自の感覚、解釈でどんどん進められている。大事な人が理不尽に命を奪われかねない切羽詰まった状況になると、国民一人一人の胸にちゃんと響いていない。国民が分からないまま、大事なことがすごいスピードで決められることに、恐怖感を覚える。

 こんな時だから演劇の力を見直したい。特定秘密保護法が制定され、何が国家の秘密かも分からない。上の人の解釈次第で、戯曲が法に触れ、処罰や上演中止になるのかなと思う。だが演劇にタブーはない。戦いの一つの方法として演劇がある。たとえ、そういう時代になっても、やり続けていく。それが力になる。

 首相は、先の戦争で国民が受けた傷や痛みを全部分かって言っているのか。ぜひ、首相に私たちの舞台を見に来てほしい。

<いのうえ・まや> 1967年生まれ。作家井上ひさしさんの三女。井上さんに関係する作品を上演する劇団「こまつ座」の社長。

 

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