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【言わねばならないこと】

(47)戦前に戻るのか 作曲家・三枝成彰氏

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 きな臭い時代になった。戦争反対、改憲反対、原発反対などと発言すると仕事を失ってしまう。テレビ番組で安倍政権を批判した元官僚の古賀茂明さんはその後、番組を降板になった。自由に話せる時代でなくなれば、この国はおしまいだ。

 集団的自衛権を認めるなんて、あり得ないと思っている。米国は朝鮮戦争で引き分け、ベトナム戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争とずっと「負け」が続く。そんな国を集団的自衛権を使って応援する必要があるのか。なぜ日本は戦前のような国をつくろうとするのか、理解できない。

 戦後、憲法九条で困ったことがあったか。もちろん世界の「一等国」にはなれない。国連安保理の常任理事国にはなれない。でも豊かな生活が送れた。なぜそれがいけないのか。ドイツはフランスと(第一次、第二次世界大戦の)二回けんかしたのを教訓に、近隣の国と仲良くすることを義務付けたが、解釈改憲し、国際治安支援部隊(ISAF)に参加しアフガニスタンに派兵した。そして五十人以上の犠牲者を出した。

 ナチスの迫害を受けたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントは、大衆の熱狂的な支持がナチスの台頭を許したと指摘した。彼女が提示した「悪の凡庸さ」が、今の日本にも広がりつつある。国民が自分の頭で考えなくなり、他者の痛みへの想像力をなくし、軽い気持ちで為政者に同調してしまうことが、社会を一つの方向へ押し流す。

 ただ、安倍晋三首相が選挙で勝ったのは間違いない。低投票率でも民意を反映していると言われたらそれまで。それが民主主義のルール。投票率90%になれば社会は必ず変わる。特定秘密保護法も政権が代わればつくり直せる。国民が変わらない限り、この国は(今の方向のまま)まっしぐらに進んでしまう。

<さえぐさ・しげあき> 1942年生まれ。オペラなどの作品多数。東日本大震災被災地の青少年を支援する「3・11震災孤児遺児文化・スポーツ支援機構」会長も。

 

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