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【言わねばならないこと】

(48)戦争 命が軽くなる 俳優・香川京子氏

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 この一年ぐらいで急に戦争が近づいてきた感じがする。ほかの国を支援すると言っても、その軍と一緒にいれば敵とみられて攻撃される。反撃したらそれが戦争につながるわけでしょ。どうして支援だけで終わるというのかが分からない。

 国の方向を決める大変なことなのに、みんなの意見を聞こうとせず、政治家が自分たちだけで決めていくのはおかしい。

 満州事変の年に生まれ、子どものときはずっと戦争だった。でも東京から茨城に疎開していたので空襲にも遭わず、身内に戦死者もいなかったので、戦争の本当の怖さは知らなかった。

 それが分かったのは映画「ひめゆりの塔」(一九五三年)で学徒の一人を演じてから。太平洋戦争末期の沖縄戦で看護活動に動員された女子学徒たちの悲劇を描いた映画。ひめゆり学徒隊の同窓会の准会員にもしていただき、たくさんの証言を聞いてきた。

 負傷兵の看護をしていた病院壕(ごう)がガス弾攻撃を受け「苦しいよう、助けて、殺して、殺して」という阿鼻叫喚(あびきょうかん)の中で意識を失い、三日後に息を吹き返したときにはたくさんの死体に埋まっていた話。低空飛行の米軍機による機銃掃射や、戦車の火炎放射器から逃げ惑った話。沖縄の悲劇を伝えなければ、という使命感に突き動かされてきた。

 沖縄戦では学徒隊に解散命令が出て、砲弾の降り注ぐ戦場に放り出された。「国民の命を守る」なんて口で言うのは簡単だけども、いざとなったら、国はそんなことはしてくれない。よく「命の大切さ」っていうけれど、戦争って、一番命が軽くなることだと思う。

 <かがわ・きょうこ> 1931年生まれ。映画「近松物語」「東京物語」などに出演。著書に「ひめゆりたちの祈り−沖縄のメッセージ」。

 

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