東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 言わねばならないこと > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【言わねばならないこと】

(49)学問の自由が危ない 慶応大教授・粂川麻里生氏

写真

 学問の自由が危ない。安全保障関連法案に危機感を覚え「慶応義塾有志の会」で廃案にするよう求める要請文をまとめた。教授だけでなく学生や卒業生まで、八月末で六百人以上が名を連ねている。要請文では、立憲主義を尊重しない政府の下では、言論の自由や表現の自由、憲法が保障する学問の自由が抑圧されかねないと訴えている。

 慶応大には、学問と政治は別で、研究者の役割は政治的な判断をする人に対して、客観性の高い専門的な知識を示すことだという考え方が強い。

 今回も政治的なアピールのつもりはない。日本社会を学問で支えようという立場から、今回の法案に「ノー」と言いたい。

 この法案は直接、学問の自由に関わるものではないが、手続き自体が「学問」の否定といえる。議論や知的蓄積が軽視されている。首相の私的諮問機関の答申を受け、これまでの政府の憲法解釈と異なる閣議決定がなされ、法案がつくられた。国会でも、政府は都合の悪い議論を避けている。

 特定秘密保護法もそうだ。何が特定秘密かあいまいで、秘密保護と両輪であるべき情報公開をめぐる議論もほとんどなかった。

 文部科学省は六月に国立大学に対し、人文・社会科学、教員養成系の学部・大学院を「社会的要請の高い分野」へ転換するよう求める通知を出した。これも知的蓄積軽視の例だ。多様な意見や観点を持つ人文科学が縮小されれば、日本社会の視野を狭くし、柔軟性、創造性を失わせかねない。

 慶応義塾の創設者、福沢諭吉は「学問のすゝめ」を著した。人々が学問の価値を知り、そこから多様な意見が生まれ、それぞれの立場から物を言える社会を目指す考え方だ。今はそれを押さえ込もうとする力が働いている。

 <くめかわ・まりお> 1962年生まれ。独文学専攻。「ゲーテ自然科学の集い」代表。公益財団法人「ドイツ語学文学振興会」理事。

 

この記事を印刷する

PR情報