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【言わねばならないこと】

(50)戦争にはルールない 経済評論家・内橋克人氏

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 言わなければならないことがある。戦争にはルールがないと。

 神戸大空襲の一九四五年三月十七日、私は盲腸(虫垂炎)を患い、自宅から離れた病院にいた。命拾いしただけでない。身代わりになった人がいる。

 家で一人になる姉のために「おばちゃん」と呼んでいた近所の女性が来てくれた。空襲で裏庭の防空壕(ごう)に避難。私がいつも座っていた場所にいたおばちゃんを、不発の焼夷(しょうい)弾が直撃した。父親が壕を掘り起こした時、おばちゃんはもう亡くなっていた。

 その年の六月五日の空襲では、目の前で多くの方が亡くなった。疎開先でそうした様子を話すと、地元の子は小銃を担ぐ格好をして「B29なんてパンパンと撃ってしまえばいいんだ」と言った。体験をしない人は分からない。

 安倍晋三首相らも同じだ。今、「戦争を知らない軍国少年たち」が安全保障関連法案を成立させようとしている。この法案は戦争に直結する。後方支援などと言っても、戦闘と区別できない。彼らの話は戦争のリアリティーが全く感じられない。絵空事だ。

 安倍政権は軍需産業による成長戦略を描き、米国とともに軍・産複合体をつくるのが最終目標のようだ。武器輸出三原則を変え、武器の輸出入を事実上、解禁した。経済界の欲望にも沿ったものだ。

 戦後は憲法九条がラムネのふたのようになって、軍需産業育成という強者の欲望を抑えていた。だが今、ふたが抜けそうだ。強者に寄り添う政権でいいのか、国民は金もうけさえできればいいのか。戦後七十年の今年、それが問い直されている。

 *   * 

 安保法案や特定秘密保護法について市民や学者、文化人が語る「言わねばならないこと」は五十回を迎えました。

<うちはし・かつと> 1932年、神戸市生まれ。神戸新聞記者をへて、67年から経済評論家。著書に「匠(たくみ)の時代」など。

 

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