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【言わねばならないこと】

(53)戦争とは思想の強要 漫画家・新田たつお氏

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 憲法九条が廃止され、普通の人々が戦場に送り込まれるようになった近未来の日本を舞台としたギャグ漫画「隊務スリップ」を連載している。徴兵制なんてあり得ないと冗談のつもりで始めたが、安倍政権の動きを見ていると、現実が漫画に近づいてきている。

 作品のきっかけは、自民党が政権に復帰する前、当時の安倍晋三総裁が「自衛隊を国防軍にする」と発言したこと。軍事力を強めてアメリカと一緒に行動することで、日本がいつか来た道を行っているのではないかと危惧した。「隊務スリップ」でも軍人の力が強くなり、シビリアンコントロール(文民統制)が効かなくなる恐ろしさを描いている。

 安全保障関連法の国会審議を聞いていても、法律の必要性がちっとも分からなかった。この法律で抑止力が高まるとか、国民の平和な暮らしが守られるとか、政府は抽象的なことしか言わない。自衛隊を海外に出せば、日本を守るための戦力は間違いなく減る。安倍首相の答弁も終始、核心をはぐらかしているという印象だった。

 強行採決で法律を成立させたが、首相も支持率の低下は気にしている。国民は言うべきことは言わないとダメだ。声を上げないと、したい放題にやられてしまう。僕はデモには行かないけど、漫画を描くだけでも意味はあるのかなと思う。

 安保法に反対する民意がこれだけ立ち上がり、反対の声を上げていることに希望を感じる。心配なのはこれから後の世代。政府は今後、教育にも口を出してくると思う。戦争とは一つの思想や考えを押しつけることであり、対極にあるのが平和だ。自由に発言できる多様性のある社会を守っていかなくてはいけない。

 <にった・たつお> 1953年生まれ。漫画誌に24年間連載された「静かなるドン」で日本漫画家協会賞大賞。「隊務スリップ」を連載中。

 

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