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【言わねばならないこと】

(57)非戦こそ最大の防衛 住職・篠原鋭一氏

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 この二十年余、寺の住職をしながら、自殺志願者からの電話相談を受けてきた。昨年一年間の全国の自殺者数は二万五千人超。十八〜二十六歳の若者の相談が増えている。

 安保法制が問題になる前から、自衛官からの相談はあった。自衛隊が海外の紛争地域へ多数、派遣されるようになったら、きっと家族と国家の板挟みになり、もっと悩むだろう。

 一九七九年、曹洞宗の若手僧侶らのメンバーとして、ポル・ポト政権崩壊後、内戦が続くカンボジアの難民キャンプに入った。以後、長年にわたり教育支援の活動に従事した。命懸けだった。カンボジアを内側から見て思ったのは、戦争による平和の実現なんてあり得ないということだ。そして、戦争による勝敗はノーサイドとはならない。ともに不幸になる。

 「実弾が入った銃を持つと人は変わる」と米ハワイ州の曹洞宗寺院で行われた会合で、イラク戦争に行った元米兵から聞いた。戦地では、背後から物音が聞こえたら、ためらうことなく撃て、と訓練を受けたという。彼は三歳ぐらいの子どもを射殺した。彼にも同じ年ごろの子どもがいた。心を病んだ。

 パリで同時テロが起きた。翌日、フランスはシリア国内の犯行組織の拠点を空爆した。人間の怨念を怨念で返そうとしたら、永遠にその連鎖は終わらない。根源的な部分で話し合わなければ解決しない。

 日本は七十年前に軍国主義時代を終了し「戦争を放棄する国」に生まれ変わった。「正」という字は、一度、止まると書く。一度、止まって、考え抜いた末に非戦という英知を得た。

 安倍首相。あなたは永遠に生き続けて日本の平和と安全を保証できますか。不可能だ。あなたには「戦える国」ではなく、戦争放棄という平和の哲学に基づいて「二度とない人生を、幸せに満ちて、人生を生ききることのできる国」をつくることこそが真理であり、正道であることを熟考し、再考していただきたい。

 <しのはら・えいいち> 1944年、兵庫県生まれ。千葉県成田市の長寿院住職。NPO法人「自殺防止ネットワーク風」代表。

 

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