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【言わねばならないこと】

(61)過ちに向き合うべき 音楽家・大友良英氏

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 他国を武力で守ることを可能にした安全保障関連法の成立後、民主主義に関するブックフェアが、政治的に偏っているとの批判を受けた。民主主義が文句を言われる言葉になっているとしたら、相当まずい。

 多数決になったら少数意見が通らないなど、民主主義は欠点もある。それでも異なる意見の人がどうやって生きていくか、四苦八苦して人類が編み出した一つの方法だ。これをNGワードにしようというのは、人類の歴史への冒涜(ぼうとく)だ。

 直接の圧力はもちろん、自主規制も問題だ。「これを言ってはまずいよね」と空気を読もうとすると、世の中はとんでもない方向に行く。空気を読むとは、他人の考えに委ね、自分は責任を取らず安全な場所にいようとすることだから。

 東日本大震災後、何かが崩れだしている。自然災害に人間は勝てないけれど、原発事故は違う。自分たちのやってきた誇りが傷つけられた。そこで素直に自分たちの責任や過ちを認め、修正する方向に行っていない。

 戦争責任も同じだ。旧日本軍慰安婦も南京事件も、なかったことにできない。なのに戦争責任も原発事故も、なかったことにして誇りを取り戻そうとするやり方がまん延している。これでは人として道を誤る。負けや過ちを認めた上で、正面から向き合うべきだ。

 ヘイトスピーチや安保法について、若者が自分で考え「おかしい」と声を上げ始めたのは素晴らしい。意見を言う人がいて、議論の場ができる社会は健全だ。

 若者に後押しされて大人も動いた。瞬発力があって扉を開ける人がいる。それに続く人、ゆっくり動く人がいる。そういうつながりを私は信じている。

<おおとも・よしひで> 1959年生まれ。10代を福島市ですごす。NHK「あまちゃん」の音楽などで東京ドラマアウォード特別賞。

 

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