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【言わねばならないこと】

(69)命より国 危機覚える 俳優、劇作家・渡辺えりさん

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 武力で他国を守る集団的自衛権行使を可能にする安保法制に危機感を覚える。この法律は、自衛隊員は国を守るためなら死んでもいい、という考え方だから。国が経済的に傾くと戦争で立て直そうとする。戦争の始まりはいつもそうだ。戦争に頼らず、軍需産業でもなく、経済を立て直す方法があるのではないかと言いたい。

 かつて、貧しい地方の農家の息子が兵隊に志願して死んでいった。格差社会が進む中で、そんなことはもう勘弁して。弱い人を助ける感情が育たない国は、戦争が始まりやすい。

 殺人が正当化される戦争は、どう考えてもおかしい。原発が攻撃されたら、もう破滅。戦争は必要悪だと言う人もいるが、私はそうは思わない。人間が始めなければ戦争は起きない。人間がその始まりを止めたい。

 そして、高市早苗総務相が政治的公平を定めた放送法を盾に放送局の電波停止に言及した。「表現の自由」が守られていくのか、とても不安だ。

 スポンサーがあって成り立つテレビでは発言の自主規制もみられるが、お客さんがチケットを買って観(み)に来る演劇は、役者や演出家が信念を自由に出してやれる場所。でも、戦争ができる国に進む現状を見て、演劇人たちも「これはちょっとやばい」と思い始めた。だから、主張を色濃く出す舞台が今、増えている。

 演劇ではお客さんが舞台に自分の姿を見つけ、人生や未来を考えることができる。客観的に考える力を養えるんです。目先のことだけを見ていると、戦争になっちゃうから。演劇でも言いたいことが言えなくなると、日本は終わり。芝居の自由を守りたい。

 人を生かすのが演劇だと思う。戦争で人が死んだら人のための演劇などできなくなる。

 <わたなべ・えり> 1955年生まれ。俳優、劇作家、演出家。日本劇作家協会副会長。渡辺流演劇塾を開いて若手を指導している。

 

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