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【言わねばならないこと】

(75)基地あるゆえの暴力 沖縄のジャーナリスト・山城紀子さん

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 米軍属が逮捕された女性殺害事件に抗議するため、沖縄県できょう県民大会が開かれる。沖縄女性に対する米軍関係者の性暴力は大戦末期の沖縄戦に始まる。終戦によって日本の人々は戦争から解放されたのに、沖縄女性には戦後も米軍占領下で、レイプとの闘いという新たな戦争が始まったんです。

 性暴力は長く「沈黙の犯罪」でした。被害を訴えれば女性の人生はより過酷にもなる。周りも傷に触れないのが配慮と黙った。米軍に特権的な権利を与える地位協定が日本側の捜査や裁判の壁になり、事件が繰り返されても「ないこと」にされてきた。

 沈黙してきた沖縄が変わり始めたのは一九七五年の「国際婦人年」とその後に続く「国連婦人の十年」です。女たちが社会のさまざまな場で問いました。「女とは何なのか」。家庭で、地域で、職場で、学校で、法の中で。そして男性の目をくぐって自身を見ることに慣れてきたことに気づいた。誰の目でもない「私の目」で考えたとき、女性の尊厳を奪う性暴力に口をつぐんではならないと。

 女たちは確信している。被害者を黙らせてきた社会の側が間違っている。加害者を罰せず、真相を究明しないできたことが後の犯罪を許してきたんだと。

 米兵らによるレイプは時間や場所、被害者の年代を選ばず、日常のあらゆる状況で起きています。朝昼夜。畑の中や仕事や学校からの帰り道。米兵が家に入り込み、夫や家族の前で暴行した事件もたくさんある。

 九一年、五十年の沈黙を破って韓国人の元日本軍慰安婦が名乗りを上げた。身体を突き刺すような彼女らの証言が示したのは、戦争や軍隊というものが女たちに何をもたらすのかということ。沖縄で起きている性暴力はまさにそう。米軍基地があるゆえに生じる構造的犯罪です。沖縄は日本全体の0・6%の面積なのに、在日米軍専用施設の74%が集中する島。基地を撤廃し、このいびつな状況を改めない限り、事件は続く。沖縄の痛みが日本全体の痛みとして共有されるのか。この普遍的な問いを沖縄だけに閉じ込めてはならない。

 <やましろ・のりこ> 元沖縄タイムス記者。女性や子ども、障害者、医療や福祉の問題をテーマに執筆。著書「心病んでも」「人を不幸にしない医療」など。

 

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