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【言わねばならないこと】

(78)平和を取り次ぐ国に ジャーナリスト・鈴木昭典さん

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 平和とは何か。私にとっては、終戦の日、ゲートルや防空頭巾を外して体が軽くなったという実体験。電気がつき、なけなしの砂糖で、家族でお汁粉を作ったという家もあった。つまり暮らしの中で、平和は絶対に必要なものなんですよ。

 日本の原点は敗戦。原爆でひどい目に遭った痛みをずっと体の中に持ち、平和路線を選択して生きてきた。しかし、平和が続き、痛みが遠くなった。平和のありがたみが薄れるのは怖い。

 現在、戦争が起こっている国の不幸を見つめながら、自分たちが不戦の憲法を持っている意味を考えるべきだが、実態は戦争国家に化けている。大国意識が強くなって昭和十年代と同じ思考になり、怖い日本の顔が露骨に出ている。

 安倍晋三首相の憲法改正の原点は、一九五五年の保守合同で生まれた自民党の党是。戦犯(容疑での逮捕)から復活した祖父・岸信介らが取り戻そうとした日本像だが、国を護(まも)る手段は武力しかないという思考だ。

 世界で一番強い指導者であるはずの米大統領が、広島に来て、生きている間に核をなくすことはできないと言った。統治権では統帥権を制御しきれないということ。世界には核兵器が二万発あり、核戦争の怖さは否定できない。人を平気で殺すのが軍隊という組織だからだ。

 日本がやるべきことは、戦争ができる国になるのでなく、平和の「取り次ぎ国」であること。広島、長崎の原爆という極限の体験をした国として、国連で大声で言わなくてはならない。

 平和で経済成長を実現するという答えを出した日本は、世界でものすごく手本になっている。「戦争をしない国」という平和の旗を、もっと生かしていかないといけない。

 長い間、憲法を取材してきた人間として、原点に立ち返ることを伝えたい。

<すずき・あきのり> 1929年生まれ。元朝日放送報道局次長プロデューサー。テレビ番組企画制作会社「ドキュメンタリー工房」代表取締役。代表作に「日本国憲法を生んだ密室の九日間」。受賞多数。

 

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