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【言わねばならないこと】

(86)共謀罪で萎縮 監視社会招く 弁護士・山下幸夫さん

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 政府が組織犯罪処罰法改正案を国会に出そうとしている。「共謀罪」を適用する対象の組織的犯罪集団にあたるかどうかは、警察や検察の認定次第だ。犯罪の準備行為を処罰の要件に加えても、条文上は犯罪を話し合って合意すれば、共謀罪が成立する。起訴しなくても警察が逮捕するだけで、その団体に大きなダメージを与えられる。

 安倍政権が安保法制で「戦争ができる国」にしようとする中、共謀罪は、沖縄の新基地建設や原発稼働、戦争に反対する人たちを黙らせる武器になる。例えば、ある市民団体のメンバーが国会の壁に「戦争反対」という落書きをしようと相談し、ペンキを買うために現金を引き出したら、建造物損壊の共謀罪が成立し、警察は逮捕できる。

 政府はテロ対策に必要だと言うが、この法案を最初に国会に出した二〇〇三年にそんな説明はなかった。たまたま二〇年東京五輪・パラリンピックが近いから、政府はテロ対策という理屈を後付けし、共謀罪の名前を「テロ等準備罪」に変えた。実際に取り締まる対象のほとんどは「等」に含まれる犯罪だろう。

 捜査当局が、犯罪の話し合いや合意、準備行為を把握し、共謀罪を適用するには、ある特定の団体の構成員を日常的に監視するしかない。尾行はもちろん、いずれは通信傍受法を改正して盗聴するだろう。共謀罪では密告した人は罪を免除される可能性があるから、互いが監視し、密告し合う社会につながる。

 人が人とコミュニケーションし、行動することは、憲法が保障する「表現の自由」「結社の自由」「幸福追求権」に関わる。共謀罪はこうした権利を規制し、萎縮させる。今、共謀罪の新設を許せば、憲法の保障が崩され、何も自由に言えない暗黒の社会になる。

<やました・ゆきお> 1962年生まれ。89年に弁護士登録(東京弁護士会)。日弁連共謀罪法案対策本部事務局長。編著に「『共謀罪』なんていらない?!」(合同出版)。

 

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