東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 言わねばならないこと > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【言わねばならないこと】

<特別編>「共謀罪」強行許されない

 「共謀罪」法の成立を受け、憲法学者の水島朝穂さんと弁護士の三澤麻衣子さんが、いま「言わねばならないこと」を語った。

写真

◆警察は執拗に監視する 弁護士・三澤麻衣子さん

 「共謀罪」法案への反対の声が高まり、国連のプライバシー権に関する特別報告者も懸念を表明する中、強行採決した政権のおごりを忘れてはいけない。廃止のため、あきらめないことが大事だ。

 「共謀罪」が市民運動や労働運動の弾圧につながると言われても、ほとんどの人は「自分には関係ない」と思っている。でも、もし自分や大切な人が、国から理不尽な被害に遭ったら必死に声を上げるはずだ。

 国会審議では、市民団体が処罰対象になる「組織的犯罪集団」に当たるかどうかの判断で「一変」「隠れみの」「周辺者」のキーワードが出た。いずれも判断するのは警察だ。ちょっとした誤解から捜査され、逮捕される恐れがある。

 例えば、冗談で盛り上がっていたら知らないうちに通報されて、組織的威力業務妨害などの疑いで任意同行を求められるかもしれない。共謀罪の対象犯罪は二百七十七。一般人が巻き込まれる恐れは十分ある。

 元社会保険庁職員が政党機関紙を配り国家公務員法違反罪に問われ、最高裁で無罪になった「堀越事件」では、延べ百七十一人の警察官が二十九日間、毎日、多いときは十一人態勢で元職員の男性を尾行し、何台ものビデオカメラで執拗(しつよう)に監視を続けた。警察はマークした人を徹底的に調べる。

 これからはLINEやメールのやりとりで、共謀罪を認定されるかもしれない。どんな考えを持つ人でも他人を傷つけない限り、発言すること自体は尊重される世の中であってほしい。それが民主主義の基盤だ。

<みさわ・まいこ> 1973年生まれ。弁護士。自由法曹団共謀罪阻止対策本部事務局長。「堀越事件」弁護団の一人。

写真

◆憲法上、重大な疑義ある 憲法学者・水島朝穂さん

 「共謀罪」法には重大な憲法上の疑義がある。

 私が最大の問題と考えるのが、何をしたら犯罪になるのか、法律で明確に示すよう求めている憲法三一条との関係だ。

 「共謀罪」法は、犯罪の実行を二人以上で計画し、うち一人が準備行為をした場合に、その合意自体を処罰するものだ。合意が何らかの形で表に出たものが準備行為とされるが、何が準備行為なのか非常にあいまい。金田勝年法相は、準備行為とみなされる犯行の「下見」と、通常の「花見」の違いを明確に答えられなかった。国民は「何をしたら犯罪になるのか」を正確に理解できない状態だ。

 三一条が実質的に求めているのは、国民の自由を制限する刑罰は抑制的であるべきだとの考え方。「共謀罪」では二百七十七もの罪が「合意」段階で処罰されることになるが、それは抑制的とはいえない。

 このまま「共謀罪」法が施行されれば、政府の方針に反対する市民活動などに萎縮が起きることが懸念される。「捜査されるかもしれない」という空気だけで声を上げづらくなる。

 最も恐ろしいのは、そんな空気が広がり続けた結果、誰もが言論を自粛してしまうことである。忖度と迎合が支配する社会は、改憲を目指す安倍政権にとって何より都合がいいだろう。

 今回の参院での採決を見る限り、今の国会に政権の暴走を止める力はない。国民が声を上げ続け、政権と世論の「ねじれ」を大きくしていくことが重要だ。

<みずしま・あさほ> 1953年生まれ。早稲田大法学学術院教授。専門は憲法学。ホームページで約20年間、憲法をテーマに発信を続けている。

 

この記事を印刷する

PR情報