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【言わねばならないこと】

(104)幸福願い 戦争を描く 末期がんを公表した映画作家・大林宣彦さん

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 日本人はどこか付和雷同で、国家権力の奴隷になってしまう。僕ら昭和十〜十五年生まれの「敗戦少年」世代は、大戦中に子どもだったからこそ、上の世代が実は戦争に反対していたこともよく知っている。でも、みんな戦争を受け入れざるを得なかった。

 俳人・渡辺白泉(はくせん)の「戦争が廊下の奥に立つてゐた」という句を、僕なんかは実感した。代々医者で、百人近くが出入りする家で、人けのない廊下を見ると、満州で死んだ隣のおじちゃんらが立っている。戦争の気配とともに暮らしていた。

 近ごろ、その気配がよみがえって、ふと見ると、戦争が立っている。死んだおやじだったり、檀一雄さんだったり。それが見える時代になったからこそ、映画「花筐(はながたみ)/HANAGATAMI」(公開中)をつくらなくてはいかんと思った。

 約四十年前、肺がん末期だった(原作の)檀さんに映画化の了承を取り付け、脚本を書いたが、誰にも相手にされなかった。日本人には経済の発展しか頭になくて、戦争のことなんかみんな忘れたふりをしていた。

 一年四カ月前、映画の全スタッフ会議の二時間前に「肺がん第四ステージ、余命半年」と言われ、無性にうれしかった。これで檀さんの痛みとつながった、おやじたちが語ろうとしなかった「断念と覚悟」を描く資格をもらったってね。

 映画を見た人から「戦争の薄気味悪さが、ずしんとくる」と感想を聞く。時代がそういう映画を産んでしまったと感じる。

 今の政治家や経済界のリーダーは戦争の実態を知らない。ひどい目にあった僕らの世代は、そこにおびえている。日本人は過去から学ぼうとしない。嫌なことはすぐ忘れ、目の前の楽なことだけを追いかける。

 十八歳で選挙に行けるようになり、駅前でビラを配る中高生たちによく会う。「私たちは戦前派です。これから来る戦争に対し、自分で自分を守る。大人は信用できない」と。

 僕らがいなくなったら戦争が伝わらないと思っていたが、戦後と戦前がつながれば、過去の戦争が今につながる。今の中高生がそういう皮膚感覚を持ち始めている。

 過去から学ぶことで世の中は良くなる。そのために映画は過去のアンハッピー(不幸)を描いてハッピー(幸福)を願う。僕らの意図をくんでくれる中高生が出てきている。やはり、映画をつくることで戦争がない時代は必ず来る。

<おおばやし・のぶひこ> 1938年、広島県尾道市生まれ。自主製作映画の先駆者で映画作家やCMディレクターとして活躍。映画「転校生」「時をかける少女」などで知られる。昨年8月、末期の肺がんが見つかり「余命半年」と診断されたが、その後の抗がん剤治療で現在は「余命未定」。最新作「花筐/HANAGATAMI」は檀一雄の同名小説が原作で、太平洋戦争勃発前夜を生きる若者たちの青春群像劇。全国で順次公開中。

 

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