東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 言わねばならないこと > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【言わねばならないこと】

(108)表現の自由失えば戦争 イラストレーター・いのうえしんぢさん

写真

 集団的自衛権の行使容認が閣議決定される直前の二〇一四年六月に、地元の福岡市で「やだね戦争! 反安倍政権アクション」を立ち上げた。祈る女性のイラストにMAKE ART NOT WARと書いた横断幕を掲げて街頭でアピールした。「戦争ではなくアートを」。農家の人なら「アート」の部分は「野菜」にしてもらえばいい。

 今でも、毎月第三水曜日に市内の繁華街に立ち、安全保障関連法の廃止を訴えている。一五年九月、安保法の成立前夜には百人以上が参加して歩道から人があふれていたが、今は五〜六人しか来ない。世の中、そんなに簡単に変わらない。それでも声を上げ続けることは、歴史的に俯瞰(ふかん)すれば無駄ではない。

 市民運動に関わるきっかけは、〇一年九月の米中枢同時テロ。アフガニスタン攻撃に反対するデモに行ってみたら、百人もいなくて「ショボ」って。デモの見せ方、表現の仕方を変えたくなった。例えば、女装して参加した。「武装より女装」というプラカードを抱えて歩きたかった。単なるダジャレだが、半分は真面目。ナチスはユダヤ人だけではなく、LGBTなど性的少数者も迫害した。

 北朝鮮問題が目の前にあるが、戦争は爆弾が落ちて始まるのではない。その前に表現の自由が少しずつ奪われ、歌や報道が規制され、人権侵害が起きる。それは、僕にとってすでに戦争だ。デモで声を上げるのは、ラブレターを書くのと同じ。高根の花の女の子にはどうせ相手にされないと書くのを止めたら決して思いは届かない。政権にも言わなければ伝わらない。

<いのうえ・しんぢ> 1970年生まれ。デザイン事務所勤務などを経て、94年からフリーランス。福岡市でのデザインコンペ賞を2006年から3年連続受賞。装丁や挿絵本は多数。

 

この記事を印刷する

PR情報