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【記者たちの戦後経済秘史】

荒廃からの反発力 中村彰宏(名古屋経済部)

軍用ソナーを転用して開発した初期型の魚群探知機=古野電気提供

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軍艦に搭載されていた音響測深機で魚の群れが探せるのではと思い付いた船舶機器メーカーの創業者。軍需が途絶え、あらゆる手を尽くして会社存続を図った接着剤メーカー。戦争に翻弄(ほんろう)されながら戦後の混乱期を乗り越えた知恵と信念に強く感銘を受けた取材だった。

終戦から七十年が過ぎ、当事者に直接会って話を聞くにはギリギリのタイミング。実際、担当した取材では肉声として当時の話を聞くことはかなわなかった。だが、関係者から貴重なエピソードを伝え聞くだけでも、先人たちの奮闘ぶりをうかがい知ることができた。

「何とかして生き延びようという信念があった」。建材メーカーに成長したアイカ工業の元社長は、戦後の苦況についてこんな言葉を残している。戦闘機向けの接着剤をつくっていたが、終戦で会社を取り巻く環境は一変。社員を十分の一に減らし、海のそばにあった工場では海水で食塩を製造して生き残りを図った。

荒廃から再び立ち上がろうとする反発力が、その後の日本社会に経済発展をもたらした。成熟した感のある現代の経済にあって、そんな気概が薄れているような気がする。だからこそ、当時の「記憶」を今に伝えることには意義がある。掘り起こした経済秘史が、未来へのヒントになれば。取材を終えた今、そんな思いでいる。

 

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