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【記者たちの戦後経済秘史】

少子化が「働き方」を問う 中沢佳子(東京経済部)

「出生率1・57ショック」を受け少子化対策に動いた元内閣官房副長官の古川貞二郎氏=東京都千代田区で

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同じ物を見ても、視点が違うと別の景色になる。人口減少は少子高齢化と裏表。社会問題だが、個人の生き方に踏み込む問題だ。

「何を考えておられるんですか」「子どもを産み育てるのを、役所が心配しなさんな」。厚生省(当時)の担当局長として少子化問題に当たった古川貞二郎氏が、女性たちにかけられた言葉だ。経済をめぐるさまざまな問題の中で、人口減少の異質さと難しさを物語っている。

出生率の数字を追えば、人口減少の未来が見え、経済の減速は予測できる。だが人間を増やすことは、命を産み育てること。「金利と違う。生身の人間、特に女性が一生を左右される問題だ」。人口問題研究者の阿藤誠氏は、議論さえ阻む当時の「空気」をそう表現した。現代の人口減少の兆しに気付く人もいたという。だが、大胆な政策はためらわれた。そんな時代の空気を感じ取りながら、二面性のある問題をどう伝えるかに悩んだ。

取材では、今も昔も変わらない。現代の少子化施策にまつわる違和感が当時とつながっていることに、驚いた。

子どもを望む人が安心して産み育てる環境づくりは、働く子育て世代を後押しするはずだ。けれど、女性は生む議論を嫌がり、家庭に縛り付けられる不安を持った。なぜか。当時、国が示した少子化対策の方向性は具体化しなかった。経済界の腰は重く、社会の理解も薄かった。どこかに「本来、育児は女性がするもの」という考えが、あったからかもしれない。

今、男性の育児参加がうたわれているが、その参加度合いはどのぐらいだろう。育休を取る男性は増えても、女性と比べればまだ短い。国は出生率アップや女性活躍を掲げるが、「育児支援は女性支援」という思い込みを拭い去って考えなければ、実現は遠い。

長時間や深夜の勤務、転勤、育児や介護との両立。女性だけではなく、男性も含めた働き方を、考え直す時だと実感した。育児も、介護も「参加」ではなく「一緒に」の社会に向けて。

 

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